映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、コメディアンの小松政夫が考える、コメディとシリアスについて語った言葉をお届けする。
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小松政夫はコメディアンだけでなく俳優としても活躍、テレビドラマ『前略おふくろ様』(一九七五年、日本テレビ)をはじめ数多くの作品に出演した。
「電線音頭をやっている時に、よくぞああいう話が来たもんだと思いますよ。それが両立できたからよかったんです。
シリアスな芝居のできない奴にコメディの『コ』もできませんよ。よく言われるんです。『これはシリアスな芝居なもので、シリアスにお願いします』って。
『シリアスってどういうことですか』と聞きましたよ。そうしたら『いや、あまりキャッキャッしないで──』と言ってくる。ちょっと腹が立ちましたね。コメディアンだからシリアスを知らない──というような言われ方をされるとね。お前はシリアスの何を知っているんだと言いたくなる。
その時、こういう話をしました。『シャボン玉ホリデー』の名物プロデューサーの葬式の時のことです。みんなで奥さんを励ましていたんだ。奥さんも『みんな、明るく振舞ってくださいよ』なんて言って。それでお酒飲んで大騒ぎして、それでお骨を拾うことになった時、奥さんの手が震えるどころか、肘から激しく動くんです。それで持っている箸でお骨を散らかして。
それを見て、今まで楽しそうにしていた参列者が、みんな泣きました。本当のシリアスって、こういうものだと思うんです。悲しそうに深刻な顔をしていればいいってもんじゃあない」
こうした、芝居に対する捉え方は師匠である植木等の教えが大きく影響していた。