新型コロナウイルスの緊急事態宣言が39県で解除され、徐々に日常生活を取り戻そうという動きが広がりつつあるが、旅行などレジャーを思う存分楽しめる環境になるまでには、まだ時間がかかりそうだ。自粛期間中の休業等で大打撃を受けた宿泊業は、いまどんな状況に置かれているのか──。ホテル評論家の滝沢信秋氏がレポートする。
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コロナショックが宿泊業に多大な影響を与え続けていることは、すでに多くのメディアで報道されている通りだ。リーマン・ショックや東日本大震災でも経験したことのない状況といえる。
様々なホテルを取材していると、「それでも3月はお客さんがちらほら来ていたが4月はキャンセルの嵐だった」という声が大勢を占める。特に非常事態宣言による外出自粛がトドメを刺した。正確な統計は出揃わないが、4月~5月も惨憺たる状況であることは想像に難くない。
深刻な状況が伝えられ始めた2月の時点では、春休みは諦めたとしてもゴールデンウィークに盛り返せるかが、宿泊業が生き残るためのメルクマールと言われていた。東京オリンピックの延期が決定となったことに加え、日々コロナの状況が悪化していく事態に絶望的なムードも漂い始めていたが、それでもゴールデンウィークは何とか営業にこぎ着けたいという事業者は多かったのである。
しかし、緊急事態宣言で一変、特に全国の都道府県に及んだことで地方の観光地などの宿泊施設は多くが休業を余儀なくされた。
移動自体が憚られる昨今、東京ナンバーの車で地方を走るだけで厳しい視線が向けられる中、例年東京からのゲストを当て込んでいる観光地や温泉地としては営業することそのものの意味合いが薄れたという声もあった。
そもそも出掛けること自体が憚られる状態で、不要不急の外出を積極的・間接的に誘引することに対して、SNSをはじめとして利用者や同業者からも様々な意見や批判が寄せられた。それは感染の有無や防止といった次元の話ではなく、「皆が我慢して同調、協力している意味を理解しているのか」というものだ。