〈私は若い人に高度医療を譲ります〉──大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授で現役医師(循環器科専門医)の石蔵文信氏が高齢者向けに作成した「集中治療を譲る意志カード(譲〈ゆずる〉カード)」が話題になっている。
カードは、新型コロナで日本の集中治療室や重症患者の治療に用いられる人工呼吸器、人工肺(ECMO)が足りなくなった場合、高齢者が若者に医療を譲る意思を示すものだ。
石蔵氏は医療が逼迫した際に、現場の医療従事者に「どの患者から先に治療するか」の“命の選択”を迫るのは酷だとして、高齢者が自ら意思表示できるようにこのカードを作成したという。
ネット上では、「意識改革の良い機会」「命の価値は年齢では決まらない」など、賛否の声が上がっているが、この議論に対して「当事者として私は集中治療を譲るつもりはないですね」と断言するのが、喜劇役者の大村崑氏(88)だ。大村氏が語る。
「最前線で働いている医療関係者や、カードを提唱した医師も立派だと思います。でも、このカードによって、年寄り切り捨ての風潮が一層進むんちゃうかと思うと、怖くてね。シニアにはシニアなりの生きる目標があるんです。私も102歳まで現役の喜劇役者として生きると周囲に公言しております。だから、自分がコロナに罹ったら医療機器を装着してもらいたいですね」