なかなか収束のめどが立たない新型コロナウイルス。5月19日現在の日本における新型コロナウイルスによる死亡者は763人で、人口100万人あたりの死者数に換算すると、スペイン587人、イタリア523人、米国268人、ドイツ96人に対して、日本はわずか6人であり、先進国のなかで圧倒的に少ない。
その理由は明確にはわからないが、すでに多く日本に住む人が免疫を獲得していた可能性も指摘されている。
では、どういった人が免疫を獲得したのだろうか。当然だが、まずは実際に新型コロナに感染した人たちだ。厚労省によると5月19日現在で、国内事例は1万6192例発生している。血液内科医の中村幸嗣さんが指摘するのは、「感染者の周辺にいた人たち」だ。
「実際に感染者が出たお店や施設の従業員、感染者の家族、クラスターが発生した病院の医療関係者に加えて、飲食店やスーパーなど不特定多数が訪れる商業施設の従業員は免疫を持っている可能性が高いです。同じことで、濃厚接触者やクラスターに関連してPCR検査を受けて陰性だった人も、実は感染者だけれど、ウイルスの増殖を自然免疫で抑えこみ、陽性と判定されなかった偽陰性の可能性があります」(中村さん)
PCR検査は完全ではなく、検査を受けたうち3割に、本当は陽性なのに陰性と判定される「偽陰性」が生じるとされる。現実にPCR検査で陰性が出た「隠れ陽性」が市中に一定数はいるだろう。
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは、「知らないうちに感染しているのは若い人ではないか」と言う。
「男女問わず、若い人ほど体力があるため感染しても重症化しません。今年に入ってからなんとなく風邪っぽかったり、一度は調子が悪くて休んだ人は、すでに新型コロナに感染して免疫を持っているかもしれません」
新型コロナに感染しなくても、免疫を持っている可能性があるという。ドイツ・シャリテ医科大学の研究チームが新型コロナに感染していない68人を調べたところ、34%から新型コロナに関連する免疫にかかわる「ヘルパーT細胞」が見つかった。
アメリカのラ・ホーヤ免疫研究所のチームはその研究を発展させ、新型コロナ未感染者の40~60%から「ヘルパーT細胞」を検出したという。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんは、こう話す。