「ある研究では、小児がんや難病の子供は闘病生活で得た経験を通して有意味感を高めていると示唆されています。小児がん患者は死と隣り合わせになって健常な子供と同じ人生を送れないなか、幼いながら自らに降りかかった苦しみを受け入れて治療に励んでいます。そうした子供は、親を悲しませたくないから痛い治療でも頑張る面もあるといいます。有意味感を持つには、“この人のために頑張ろう”という利他的な感情も大きなポイントです。
子供たちが治療をひとつひとつ乗り越えていくことが小さな成功体験の積み重ねとなり、“これを乗り越えられたから次はこれも大丈夫”と思えるようになることも、首尾一貫感覚を高めます。一般の人でも、ただ家にいるのではなく掃除でも読書でもいいので、日々の小さな目標を立ててそれをクリアしていけば、有意味感を高められるはずです。
つまるところ、とんでもない試練や課題が自分に降りかかった時、それをどう捉えられるか、どう乗り越えられるかが重要です。コロナとともに生きていくこれから先も、世の人には、『この出来事を、絶対に意味のあるものにしてやる!』くらいの意気込みで臨んでほしいですね」(舟木氏)
どんな人生にも、どれだけつらい出来事にもきっと意味がある。まずはそう感じることから、アフターコロナに向けた第一歩を踏み出そう。(文中一部敬称略)
●取材・文/池田道大(フリーライター)
【プロフィール】舟木彩乃(ふなき・あやの)/ヒューマン・ケア科学博士。10年以上にわたってカウンセラーとしてのべ8000人以上の相談に対応。筑波大学大学院博士課程修了(ヒューマン・ケア科学博士)。メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー企業)副社長。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館新書)がある。