四角い箱を背負って都心を駆け抜ける自転車男たちの姿は、東京ではコロナ禍におけるおなじみの光景となった。レストランの料理を宅配する「Uber Eats(ウーバーイーツ)」のサービスはいまや社会インフラだが、一方で配達員の事故や冷遇など過酷な労働環境が問題視されている。中国でホストクラブ勤務や「テーマパークの着ぐるみの“中の人”」など様々な職業体験をルポしたライター・西谷格氏が、「ウーバー配達員」を新たな潜入先に選んだ。
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新型コロナの影響は出版業界も例外ではなく、私のライター仕事も発注が芳しくない。ひとつ副業でもしてみるか……と街中で見かけるウーバーイーツ配達員を始めてみると、世の中の仕組みが垣間見えた。
配達員として働くべく、まずは専用アプリ「Uber Driver」をダウンロードし、氏名や年齢、顔写真、免許証の画像などを送信した。始める前に、あのよく見る配達用のバッグはどうすればいいのか。コールセンターに問い合わせると、不慣れな口調の女性が出た。
「アマゾンでお買い上げいただきたいのですが、現在品薄となっています。ご自分で用意されたもので構いません」
何でもいいのかと聞くと「はい、それなりのものなら」。それなりとは?と重ねて問うと、常識レベルの清潔感や保温性があれば問題ないそうで、あまり堅苦しく考えなくても良いようだ。
専用バッグを使いたかったが、転売目的の買い占めによりアマゾンでは売り切れ。ヤフオクで1万5000円の高値で売られたものを見つけ、泣く泣く購入した。愚直にメシを運ぶドライバーより、“転売ヤー”のほうが儲かりそうだ。