コロナ不況のいま、ネット上では「中学受験どころじゃない世界になる」「私立中学から公立中学に転校者が続出?」などのスレが飛び交っている。6年連続で受験者が増えていた中学受験人口だが、来年は一転激減してしまうのだろうか。安田教育研究所代表の安田理氏が、受験をめぐる環境変化と私立中学の新しい取り組みについてレポートする。
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いま新聞やTVのニュースを見ると、コロナ禍による雇い止め、倒産、内定取り消し……といった悲惨な記事や情報が溢れている。確かにそれは事実なのだが、それがストレートに中学受験に結び付くかというと、少なくともここ2、3年については疑問に思う。
例年3月に行っている安田教育研究所の中学入試セミナーで今年話す予定だった内容に、「企業社会と受験の構造」というものがある(コロナの影響で開催は中止)。
小学校受験、中学受験、高校受験にそれぞれ企業社会におけるどのような層が参入しているかを考えたものである。わかりやすく言うと、『社長・役員層』『管理職・専門職層』『正社員層』からは中学受験に矢印が伸びるが、『非正規雇用層』からはこれまでも矢印は存在していない。
もちろん飲食業、観光業、運輸業、小売りなど大打撃を受けている個人事業主の家庭からの受験組は減るかもしれないが、主たる供給源である企業社会の『管理職・専門職層』『正社員層』からはすぐには減らないとみるのが妥当だろう。この時期、大手企業の決算が発表になり極めて厳しい数字が語られているが、即正社員のリストラ、賃金の大幅削減にはつながらない。
また、現小学6年生・5年生はすでに3年、2年と塾通いに投資してしまっている。ここで止めたらこれまで少なからずかけた分が水泡に帰す。これからどうするか迷っている小学校の低学年、中学年の家庭はともかく、すでにのめりこんでいる家庭はそう簡単には撤退できないのが中学受験なのである。