毎日報じられている新型コロナの新規感染者数を注視している人は多いだろう。しかし、このほど警察庁が発表した“ある数字”が話題を呼んでいる。
今年4月の自殺者数は1455人で、昨年4月の1814人に比べて19.8%も減少していたのだ。
2か月近くにわたる自粛生活で、たびたび心配されてきたのが自殺者の増加だった。「経済的に困窮した人が絶望して死を選んでしまうのでは」などと危惧され、実際、自殺防止のための相談窓口に寄せられる新型コロナ関連の相談件数は急増していた。
しかし、蓋を開けてみると出てきたのは自殺者が「約20%減」という意外な事実だったわけだ。その理由について、公認心理士の大美賀直子さんはこう分析する。
「もともと4月などの年度替わりは、進級、就職が絡むことで自殺者数が増える時期。今年、自殺者数が減少したのは、在宅勤務や自宅学習によって、会社や学校に行くストレスが減った影響があるのかもしれません」(大美賀さん・以下同)
そもそも、自殺の要因は1つだけではなく、複数の要因が結びついていることが多いという。
警察庁の資料などをひもとくと、大きく分けて、自殺は病気などの「健康問題」、失業や負債を抱えるなどの「経済・生活問題」、夫婦間の不和などの「家庭問題」、さらに「男女問題」などの要素が絡み合って起こると考えられている。また、働く人にとっては職場の人間関係や、過労などの「勤務問題」。学生にとってはいじめや不登校などに絡む「学校問題」も自殺の要因となる。今年の自殺者減は外出自粛によって、「勤務問題」と「学校問題」という2つの要素が減ったことが影響している可能性が高い。
近年、日本全体での自殺者数は、2003年の3万4427人をピークに減少していた。しかし、10代の自殺者数は増加傾向にある。今回の警察庁のデータは年齢別に公開されていないため、今年4月の10代の自殺者数は不明だが、休校措置の影響を受けている可能性は大いにある。