近年、災害によってインフラが破壊されることが増えている。とくに鉄道は、その老朽化もあり、どのような形で存続するのか、それとも廃止を選ぶのか決断を迫られることも多い。豪雨で被災したJR九州・日田彦山線と沿線地域で始まっている、新しい公共交通機関として注目を集め導入例が増えているBRT(バス高速輸送システム)への転換の試みなどについて、ライターの小川裕夫氏がレポートする。
* * *
新型コロナウイルスの感染拡大により、3月半から4月、そして5月に入っても多くの人が外出を控えている。週末の繁華街からは人が消えた。それだけではなく、通勤・通学で混雑する平日のラッシュ時間帯も、鉄道各線の車内は閑散としている。
鉄道各社は減収減益。以前から経営が苦しいローカル線のみならず、JR東日本・東海・西日本といった大手にも経営危機が忍び寄る。
ここ数年、ローカル線は訪日外国人観光客の急増といった干天の慈雨もあり、なんとか命脈を保ってきた。しかし、新型コロナウイルス禍により訪日外国人観光客の需要は消失。不採算路線を維持する余裕はなくなった。
九州一円に路線網を有するJR九州は、2016年に東証一部上場を果たした。以降、順調に収益を拡大してきた。そんなJR九州もコロナ禍が直撃。経営は一転し、他社同様に乗客を大幅に減らしている。JR九州は2020年1~3月期の最終損益が約38億円の最終赤字になることを発表した。4~6月期も厳しい数字になることが予想される。
そんなコロナ禍で厳しい経営を迫られる中、JR九州は頭の痛い課題を以前から抱えていた。それが被災路線の復旧だ。
2016年に発生した熊本地震はJR九州の豊肥本線などが被災したほか、南阿蘇鉄道や熊本電鉄、くま川鉄道、肥薩おれんじ鉄道など広い範囲で鉄道路線が損壊した。特に、南阿蘇鉄道は深刻な打撃を受け、現在に至っても全線復旧していない。
熊本地震からの復旧でも手一杯なのに、翌年には九州北部豪雨が発生。福岡県の久留米駅と大分県の大分駅とを東西に結ぶ久大本線、福岡県の城野駅と大分県の夜明駅とを南北に結ぶ日田彦山線などが被災した。