コロナ禍の裏で安倍政権が“数の力”でゴリ押ししようとした検察庁法改正案は国民の怒りで潰えた。そればかりか渦中の黒川弘務・東京高検検事長は緊急事態下で賭け麻雀に興じていたことが発覚し、辞任に追い込まれた。
しかし、この法案成立断念によってかき消された動きもある。自民党内の不穏な気配は、同法案の委員会採決を目指していた5月13日、元新潟県知事の泉田裕彦・代議士が「強行採決は自殺行為。強行採決なら退席する」とツイートして委員を外されたことから始まった。
その翌日には石破茂・元幹事長が派閥のウェブ例会で「国民の納得、理解を頂ける状況とは全く思っていない」、竹下派副会長の船田元氏も、「国民世論をないがしろにする所業だ」と批判が広がっていった。自民党幹部の1人はこう見ていた。
「強行採決に持ち込めば、本会議で党内からかなりの棄権票や欠席者が出る可能性がある。地元の批判も強いし、次の選挙を考えたら、オレだってできるなら棄権したいくらいだ」
野党幹部も、「加藤の乱の再現になるかもしれない」と自民党からの造反に注目していた。
ところが、造反が起きたのは野党の方だった。旧民主党の参院政審会長や財務副大臣を歴任した立憲民主、国民民主などからなる野党統一会派の大物、桜井充・参院議員が安倍首相側近の世耕弘成・参院幹事長と会談し、「与党に行かないとなかなか仕事ができない。医師としての経験を新型コロナウイルスの第2次補正予算案の編成に役立てたい」(15日)と、自民党会派入りを表明したのだ。野党幹部が言う。