史上初の中止が発表されたプロ野球のオールスターゲーム。過去には様々な名試合、名場面が生まれたが、「史上最高」と語り継がれるのが、江夏豊(阪神)が9者連続奪三振という大記録が達成した1971年のオールスターゲームだ。第1戦では、江夏がパ・リーグ打線をきりきり舞いにし、継投でノーヒット・ノーランをやられたパだが、翌戦から逆襲が始まる。第2戦のセの先発は、4年目で初出場した松岡弘(ヤクルト)だった。
「緊張してたんでしょう、いきなり先頭打者の有藤(通世・ロッテ)さんの背中にぶつけましたもん(笑い)。続く張本(勲・東映)さんにはセンター前に弾き返され、長池(徳二・阪急)さんにも内野安打を許してたった8球で失点、敗戦投手ですわ。
ベンチに戻ると王(貞治・巨人)さんから“君の球は速いよ。スピードに勝る脅威はない”と言われた。そのときはジーンときたが、後々考えると策にハマったんじゃないかと思う。その後真っ向勝負でどれだけ打たれたか(笑い)」
先発の金田留弘(東映・金田正一の実弟)から4人で継投したパの投手陣に、セはわずか2安打。長池の一発もあって4対0とパが快勝した。そして1勝1敗で迎えた3戦目。後楽園球場には超満員の3万9035人が集まった。当時、学習院初等科に通っていた浩宮さま、現在の天皇陛下もご学友とともに観戦に訪れていた。
セの先発は、松岡の高校時代のライバルだったカミソリシュートの平松(政次・大洋)。中日の4位指名を受けながら巨人を熱望した平松は一度は社会人へ進むも巨人入りは叶わず、大洋に入った経緯がある。