【書評】『毎日が最後の晩餐』/玉村豊男・著/天夢人・刊/1800円+税
【評者】嵐山光三郎(作家)
不死身のワイナリー・オーナー玉村豊男はフランスで自炊をはじめてから50年たち、ワインを飲みながら、ぶどう畑にしずむ夕日をながめる優雅な日々。74歳になったとき、シンデレラ姫のように美しい妻サエ子さんに、「料理のレシピを書いておいて」と頼まれた。いままで五冊の料理本を出してきたが、そのなかでよりすぐりを選んで、ていねいに書いたのがこの一冊である。
「先ベジ」といって、さきにベジタブル。冷えた白ワイン。飲みかけのワインが三本ぐらいあり、栓を抜いて三日ぐらいたったワインがいける。熟成しておいしくなる。グリーンサラダの写真を見たら、手をのばして食べたくなっちゃった。サラダリーフとレタス。傑作は萎びた白菜のロースト。飼っているヤギ子用の白菜の芯の部分をタテ切りにして焼く。うーん、根性あるな。
台所の片隅に放置された大根や芽が出たジャガイモを調理する。古大根は甘味が増え、水分が抜けたジャガイモは旨味が凝縮して滋味深い。年老いて衰えた野菜に隠れた旨味を発見する。