音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、コロナ禍前はほぼ毎日ナマの高座に接していた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、3月に真打となった柳勢・歌扇・丈助・一左・志う歌らの個性あふれる高座についてお届けする。
* * *
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、4月最初の週末から5月連休明けまで、すべての落語会が中止、もしくは延期となった。
前回書いたようにこの3月、落語協会に5人の新真打が誕生したが、落語立川流では志の輔門下の立川志の春が4月1日に真打昇進を果たし、19日に有楽町朝日ホールで披露目の落語会を開くことになっていたが、6月28日に延期。同じく4月1日に五代目圓楽一門会では三遊亭鳳笑、三遊亭楽大が真打に昇進、15日まで両国寄席で披露目をやるはずだったが休席に。落語芸術協会では昔昔亭A太郎、瀧川鯉八、伸三改め桂伸衛門の3人が5月上席から行なう予定だった真打昇進披露興行を秋以降に延期すると発表した。
落語協会の新真打は三遊亭圓丈門下のたん丈改め三遊亭丈助、春風亭一朝門下の春風亭一左、三遊亭歌武蔵門下の歌太郎改め三遊亭志う歌、柳亭市馬門下の柳亭市楽改め玉屋柳勢、師匠の三代目圓歌没後に若圓歌門下となった三遊亭歌扇。彼らの披露目は13日間で終わってしまったが、僕は鈴本で全員の高座を観た。
3月21日は柳勢で『粗忽の使者』。師匠の市馬が「地武太治部右衛門と田中三太夫の会話を大工の留が再現する」五代目小さん型なのに対し、柳勢は会話を回想シーンとして挿入。地武太の粗忽な台詞をリアルタイムで描くことに重点を置いていた。留のチャラい感じが独特だ。