全国で緊急事態宣言が解除され、様々な店舗が営業を再開し始めた。密閉、密接、密集の「3密」が起きやすい場所のひとつとして、営業自粛を求められていたパチンコ店も、自治体や規模によって少しずつ時期は異なるが営業が始まっている。仕事や人生がいまひとつうまくいかないと鬱屈する団塊ジュニアやポスト団塊ジュニアを「しくじり世代」と名付けた俳人で著作家の日野百草氏が、休業を選び「私たちの勝ちですよ」と言った47歳パチンコチェーン店幹部が考えるコロナ後についてレポートする。
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「私が言った通り、日常が戻ります。首都圏も時間の問題です。パチンコの自粛話なんて、やがて誰もしなくなるでしょう」
39県で緊急事態宣言が解除され、明るい兆しがほんの少し見え始めた5月中旬、千葉県柏市。柏駅周辺も以前よりは人出が戻りつつあった。私の実家の野田市から東武線で20分ほど、私の10代はこの柏とともにあった。四半世紀も前、柏駅前の柏マルイと、その地下のゲーセン、通称「マル地下」。そこに集まるイケてない高校生、私たちオタク集団の中に、西口真ニさん(仮名・47歳)もいた。彼は関東の地場のパチンコチェーン幹部。ようやくつながった電話、待ち合わせはもちろん柏。西口さんも私も柏の人ではないが、やはり東葛地域に生まれたからには「集まるのは柏」なのだ。
「うちのホールは大丈夫ですけど、地域によるみたいですね、営業再開しても駄目なとこはとことん駄目と聞きます」
にぎやかなはずのマル地下はシャッター街となっていたが、かつての馴染みのそば屋はこのコロナ禍にあっても頑張って営業を続けていた。金持ちの家の子だった西口さんにこの店でよくおごってもらった。渋い高校生だ。昔も今も、同い年なのにオタクにあるまじき貫禄だ。
「でもね日野さん、大手以外、ホールがどこも厳しいのは今に始まったことじゃない。それは日本のエンタメすべてに言えることですが、淘汰は加速するでしょう。でもパチンコ業界の場合は少し違う」
西口さんはそこまで話すと、さてどこからどこまで話そうか?と尋ねてきた。私がパチンコのことを全然知らないし打ったこともないので、突っ込んだ話をしていいかということだ。読者は詳しい人が多いから単語はきっちり拾うだろうし、気にしなくていいと答えた。もちろん専門誌ではないので噛み砕いたり一般的な言葉に置き換える、とも付け加えた。
「パチンコやパチスロってのは、私たちホール経営の側がいっぱい出してあげよう、お客さんを大当たりにしてあげようと思っても自由にはならない決まりです。日本のギャンブルは全部そうですが、とくにお上はパチンコには厳しい」