前回の東京五輪が開催された1964年に開業した東京メトロ日比谷線に、新駅「虎ノ門ヒルズ駅」が開業する。この開業と同時に東武伊勢崎線久喜と恵比寿を結ぶ「THライナー」が話題だが、利用者にとっては都内の地下鉄乗り換え時間が長くなることのほうが、地味だが影響が大きいだろう。ライターの小川裕夫氏が、虎ノ門ヒルズ駅開業に伴う変化についてレポートする。
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今年3月14日、山手線では約半世紀ぶりの新駅となる高輪ゲートウェイ駅が誕生した。新型コロナウイルスの影響から開業式典は取り止めになり、駅前広場の整備も完了していない。そうした中途半端な状態ではあるものの、高輪ゲートウェイ駅には多くの注目が集まった。
高輪ゲートウェイ駅に関する話題は多岐にわたる。山手線という日本を代表する路線なのに斬新すぎる駅名は、駅名決定の発表時から賛否を呼んだ。また、報道公開時には駅名標が明朝体で描かれていることが判明。それらも耳目を集めた。
高輪ゲートウェイ駅のほかにも、今年に開業予定の注目すべき駅がある。それが、東京地下鉄道(東京メトロ)が6月6日に新規開業させる虎ノ門ヒルズ駅だ。
虎ノ門ヒルズ駅は高輪ゲートウェイ駅と似たようなネーミング意図を感じさせる。それでも、高輪ゲートウェイ駅ほどの非難の声は目立っていない。裏を返せば、それだけ高輪ゲートウェイ駅への関心が高かったということでもある。
高輪ゲートウェイ駅に比べると話題性に劣る虎ノ門ヒルズ駅だが、東京の交通全般を劇的に変える、これまでの鉄道利用の概念を覆す可能性を秘めた駅でもある。
2006年に竣工した六本木ヒルズをはじめ1990年代後半から現在にかけて、森ビルは東京の一等地に高層ビルを次々と竣工してきた。そのため、森ビルはあたかも高層ビルの代名詞のような存在にもなった。そして、本拠地でもある虎ノ門に森ビルは念願だった虎ノ門ヒルズを完成させた。
単に都心に立つシンボリックな高層ビルというだけではない。虎ノ門ヒルズは立体道路制度を活用し、東京都が長年の悲願としてきた環状2号線全通の道筋をつけた。
2014年に開業した虎ノ門ヒルズは、隣接するビジネスタワーにバスのターミナルを整備。このターミナルは2020年に開催予定だった東京五輪をにらみ、中央区晴海などへとアクセスするBRT(バス高速輸送システム)や空港のリムジンバスが発着する。新型コロナウイルスによって延期が決まったが、本来なら五輪を支える交通のハブになる施設だった。