コロナ禍でドラマ制作が苦戦を強いられる中、再放送で過去の名作ドラマが放送されるケースが増えている。TBSの日曜劇場では『下町ロケット』『ノーサイド・ゲーム』が放送。同枠では、その次に『99.9 刑事専門弁護士』の特別編が放送される。そこにはTBSのある狙いがあるという。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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5月31日21時からTBSの名門枠・日曜劇場で『99.9 刑事専門弁護士 特別編 第1夜』が放送されます。同作は松本潤さん主演のリーガルドラマで、2016年と2018年の二度に渡って放送。一話完結で事件解決する爽快感と、小ネタをふんだんに盛り込んだ脱力感がウケて、2作とも全話平均17%超の世帯視聴率を獲得しました(ビデオリサーチ、関東地区)。
そのため特別編の放送が発表されたとき、ネット上には喜びの声が飛び交っていましたが、一方で「『半沢直樹』はまだか」「放送中止だけは避けてほしい」などと落胆するコメントも見られました。視聴者が複雑な心境になってしまうのも仕方がないでしょう。今春の日曜劇場には、7年ぶりの続編となる『半沢直樹』が予定され、4月19日の第1話スタート前となる5日と12日にも『半沢直樹 特別総集編』(前シリーズの再放送)が予定されていました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で『半沢直樹』の続編は撮影休止になってしまい、急きょ4月5日、12日、19日に『下町ロケット 特別総集編』、4月26日、5月3日、10日、17日、24日に『ノーサイド・ゲーム 特別編』が放送されました。この3作はいずれも池井戸潤さん原作小説のドラマであり、「『半沢直樹』続編にいい形でつなぎたい」という戦略によるものです。
ネット上には『下町ロケット』『ノーサイド・ゲーム』『半沢直樹』と続く流れを知った人々が親しみを込めて、「日曜劇場が“池井戸劇場”になった」なんて声をあげていましたが、撮影休止期間は当初の想定以上に長期化。8週間に渡って『下町ロケット』『ノーサイド・ゲーム』を放送しても、まだ『半沢直樹』続編スタートのメドが立たなかったのです。
池井戸潤さんの原作小説を日曜劇場で放送したドラマには、まだ『ルーズヴェルト・ゲーム』『下町ロケット2』『陸王』の3作が残っていて、これらの特別編を放送することもできたでしょうが、実際に選ばれたのは『99.9 刑事専門弁護士』。なぜ8週間に渡って放送された“池井戸劇場”の流れを断ち切って、世界観の異なる『99.9 刑事専門弁護士』に変更されたのでしょうか。
◆すべては『半沢直樹』続編のために