ライフ

認知症でも忘れない郵便受けチェック 「誰から?」ワクワク

郵便物を取りに行くこと、開封することを忘れない母だから…(イメージ写真)

 父の急死で認知症の母(85才)を支える立場となった『女性セブン』のN記者(56才・女性)が、介護の日々を綴る。今回は「手紙」に関するお話。

 * * *
 母宛てにきれいな花の絵はがきが届いた。送り主のことは覚えていないが、「またお逢いしましょう」の手書き文字に母の心が躍ったことがよくわかった。閉塞ムードで元気が出ないいま、手紙がもつ“伝心”の力を改めて見直す出来事になった。

◆ハグするように気持ちがつながる

 新型コロナウイルス感染拡大以前は、週3回のデイサービスにサ高住内のアクティビティー、月1回の通院、たまに好きな落語や美術展に出掛けたり地域の認知症カフェに行ってみたりと、結構忙しく暮らしていた母。それがいま、すべてなくなった。刺激がゼロになり、認知症が一気に進むのではないか、気力もなくすのではないかと日に日に心配が募っている。

 そんなある日、母の様子を見に行くと、案の定空気はどんよりしていたが、お気に入りの写真などを並べた棚に、見慣れない絵はがきが飾られていた。きれいな押し花模様と手書きのメッセージが。

「これ、謎なのよ」と母が手に取り、声に出して読んだ。

「“しばらくは離れて暮らすコと、ロと、ナ…?”」

 少し前にインターネットで話題になっていた短歌だ! “つぎに逢ふ時は君という字に”と、素敵な下の句が続くが、母には少々難しかったようだ。

「それでね、またお逢いできるのを楽しみにしてるって書いてあるの。誰かしら?」

 送り主は以前、参加した認知症カフェの主宰者Iさんだった。カフェが楽しく、帰り際にハグするほど親しくなったが、残念ながら母の記憶に留まっていなかった。

「いまコロナでカフェができないから、Iさんが心配して送ってくれたんだよ」

「まぁ、うれしいわ。遊びに来てくれればいいのに」

 小さなはがきの一文でIさんの気持ちはちゃんと母に届いている。そして母も会いたくなったのだ。カフェでのハグのシーンがよみがえり、見ると母も幸せそうな顔をしていた。

◆認知症でも忘れない、郵便受けのチェック習慣

関連記事

トピックス

20年ぶりの万博で”桜”のリンクコーデを披露された天皇皇后両陛下(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
皇后雅子さまが大阪・関西万博の開幕日にご登場 20年ぶりの万博で見せられた晴れやかな笑顔と”桜”のリンクコーデ
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
《実兄が夜空の下で独白》騒動後に中居正広氏が送った“2言だけのメール文面”と、性暴力が認定された弟への“揺るぎない信頼”「趣味が合うんだよね、ヤンキーに憧れた世代だから」
NEWSポストセブン
高校時代の広末涼子。歌手デビューした年に紅白出場(1997年撮影)
《事故直前にヒロスエでーす》広末涼子さんに見られた“奇行”にフィフィが感じる「当時の“芸能界”という異常な環境」「世間から要請されたプレッシャー」
NEWSポストセブン
第三者委員会からハラスメント被害が蔓延していたと指摘されたフジテレビ(右・時事通信フォト)
《フジテレビの“あしき習慣”》古くからあった“女子アナ接待”の実態、仕切りは人気ドラマのプロデューサー スポーツ選手との関係構築のため“利用”するケースも
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下は秋篠宮ご夫妻とともに会場内を視察された(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
《藤原紀香が出迎え》皇后雅子さま、大阪・関西万博をご視察 “アクティブ”イメージのブルーグレーのパンツススーツ姿 
NEWSポストセブン
マンジャロは腹部に注射する
《美容クリニックで流行》糖尿病治療薬を使った“GLP-1ダイエット”に専門医が警鐘「安全性が不明」「医療倫理的に問題ある」
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
【独自】「弟がやったことだと思えない…」中居正広氏“最愛の実兄”が独白30分 中居氏が語っていた「僕はもう一回、2人の兄と両親の家族5人で住んでみたい」
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
新田恵利(左)と渡辺美奈代があの頃の思い出を振り返る
新田恵利×渡辺美奈代「おニャン子クラブ40周年」記念対談 新田「文化祭と体育祭を混ぜたような感覚でひたすら楽しかった」、渡辺「ツアーも修学旅行みたいなノリ」
週刊ポスト
新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト