「セックスレス」が1つの社会問題として語られるように久しいが、夫婦間の性交渉が無いものの、離婚はしたくない場合、これはどう対処すべきなのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
妻とはセックスレス。彼女は不機嫌で、離婚を考えているようです。先生は離婚に至る条件として、3年間の音信不通などを挙げていましたが、性交渉をしないことも離婚事由になるのでしょうか。私は別れたくないのですが、セックスレスで離婚が成立した場合、慰謝料を覚悟しなければいけませんか。
【回答】
離婚裁判では、法の定める離婚事由が必要です。結婚前に性的不能であることを隠して結婚し、同居後も性交渉がない場合には、離婚事由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するとして、離婚を認めた裁判例は少なくありません。
結婚は男女の精神的・肉体的結合ですし、女性が性的関係のない結婚を希望したのであればともかく、性的不能者との婚姻関係の継続は困難でしょうから、離婚事由になるのは、もっともなことです。
しかし、正常な結婚生活をしていた夫が性的能力を失ったからといって、それだけで直ちに婚姻生活が破綻、婚姻を継続し難い重大な離婚事由になるかは疑問です。性的能力喪失の結果、妻が愛情を完全に失って別居するなどして、婚姻生活の復元が不可能になったような場合なら、離婚も認容されるでしょう。