ペットをなでるだけでなく、時にはキスやハグ──。新型コロナウイルス感染拡大で人間同士の社会的距離が求められるなか、飼育動物との「密」なスキンシップに癒しを求める人が増えた。
だがペットも新型コロナの感染リスクと無縁ではない。
オランダのミンク農場でひとりの従業員が新型コロナに感染した。その従業員は飼育するミンクから感染した可能性が高いと5月19日、オランダの農相が明らかにした。
「ユトレヒト大学などの研究チームは、はじめに人がミンクに感染させて、その後、ミンクの飛沫や排泄物を介して従業員に感染した可能性が高いと報告しました。同チームは、農場従業員の感染予防対策が必要と提言しています」(欧州在住ジャーナリスト)
動物の感染は各国で報告されている。
ベルギーでは、嘔吐や呼吸困難、下痢の症状が出たペットの猫を検査したら陽性だった。香港では飼い主からペットの犬に感染し、ニューヨークでは動物園の飼育員からトラに感染した事例がある。
気になる動物から人への感染について、国際獣疫事務局は「感染が確認された動物がウイルスを拡散する証拠はない」としていた。しかし、オランダの事例を見ると感染した動物が人にうつす可能性は充分にある。
そもそも新型コロナは、コウモリが起源とされる。インコから感染するオウム病や、犬から感染する狂犬病など、動物が人にうつす感染症は少なくない。クリスタル医科歯科クリニック内科院長の中島由美さんが説明する。
「新型コロナのペットから人への感染は非常にまれですがリスクはゼロではない。屋外に出る動物とは極力接触を避けた方が無難です。そのペット自体が感染していなくても、感染者がペットを触ったり、感染者の飛沫がペットの体毛に付着すれば、周囲への感染リスクが高まります」