臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、ようやく「東京アラート」を発動した小池百合子東京都知事について。
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発動されるだろうと思っていたのに、なかなか発動されなかった感染拡大警報「東京アラート」。アラートの発令とともに、赤く点灯し警戒を呼び掛けるとしていたレインボーブリッジの照明は、虹色にライトアップされたままの日が続いていたが、アラート発令に伴いようやく赤く光った。
東京都が独自の基準を設けた東京アラートの発令基準は、直近1週間の平均で、(1)1日あたりの新規感染者が20人未満、(2)新規感染者に占める感染経路不明の割合が50%未満、(3)週単位の感染者増加比が1未満の3点だ。3つの基準うち、6月1日時点でクリアしていたのは1つだけ。ネット上では「なぜ発令されないのか」という疑問の声が相次いでいたが、2日になって、新たに34人の感染者が確認されたことを受け、ようやく東京アラートが発動された。
緩和目安となる基準を1つでも越えた場合、「東京アラートがキンコンカンと鳴りますよ」。小池都知事は会見でそう述べていた。
キンコンカンとはなんとも緊張感がない表現だ。学校の下校チャイムでもあるまいし、警戒警報らしくない。印象には残るが、聞いた瞬間「本当に出す気があるのか?」と思ったほどだ。
思い返してみれば、小池都知事は、東京オリンピックが延期となり、新型コロナウイルスによって緊急事態宣言が発出されるかどうかという頃から、怒涛の勢いで存在感を強めている。それも主に自身の言動によってだ。
3月25日の会見では、「ロックダウン」という言葉で都市封鎖を示唆し人々の不安や恐怖を煽り、安倍政権を慌てさせたと言われる。実際に東京都が都市封鎖されることはなかったが、人々に強い危機感を与えた。
4月9日にも、コメントを求めて集まった報道陣に対し「密です。密です」と手を上げてソーシャルディスタンスを求める様子が報じられた。これがネット上で話題になり、ソーシャルディスタンスを守る『密ですゲーム』まで登場するなど、もはや社会現象となっている。