新型コロナウイルスへの感染を防止しながら、新たな生活様式を実践していかなければならないこれからの時代。「免疫パスポート」という考え方に注目が集まっている。
「免疫パスポートとは、新型コロナに感染して免疫ができたことを証明する書類やパスのことです。経済活動を安全に再開するため、抗体検査をしてウイルス感染がわかった人に免疫パスポートを与えて、就労や移動の自由を認める動きが各国で出ています」(全国紙科学部記者)
新型コロナウイルスに感染しにくい人を可視化できる免疫パスポートだが、プライバシーの侵害や差別につながるとの懸念もある。
◆生命保険では保険料に差が出る
これから先、免疫パスポートを持つ人と持たない人では、どのような差が生まれるのだろうか。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんはこう話す。
「中和抗体を正確に測れる免疫パスポートができたら、社会生活に違いが出る可能は充分あり得ます。たとえば、病院だと通院や治療など、抗体のある人はすぐにサービスが受けられ、抗体のない人は別メニューになったり、同じサービスを受けるのが遅れたりする変化が起きるかもしれません」(一石さん)
血液内科医の中村幸嗣さんが続ける。
「免疫パスポートを持っていない人でも入院、治療は受けられますが、感染拡大防止のため“病室は個室に限定する”など細かい制限は課されるでしょう。病院にお見舞いに行く場合も拒否などされないと思いますが、院内感染を防ぐためやお互いの安心感を得るためにも免疫パスポート持参が必要になるかもしれません。これは高齢者介護施設を訪問する際も同じです」
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは「免疫パスポートは、ウイルスをうつされるリスクが高い人に重要な指標になる」と指摘する。
「医療従事者のほかにも介護施設で働く人や夜の街で働く人は他人との接触が多く、免疫パスポートを持っていた方が安心して働くことができます」
閑古鳥に悩む店側にとっても格好のアピールポイントとなる。この先、「従業員全員が免疫パスポートを持っています」と店頭に掲げる店がスタンダードになり、持っていない店は売り上げが伸び悩むかもしれない。
日常生活はどうなるか。コロナ対策でロックダウン(都市封鎖)を進めたイギリス政府は、検査で抗体が確認された人に証明書やリストバンドを渡し、外出制限を解除する施策を検討中だ。