リアリティ番組「テラスハウス2019-2020」(Netflix及びフジテレビ系)に出演中だったプロレスラー木村花さんが急死、その背景のひとつにSNSでの誹謗中傷があったことが社会問題とななった。木村さんのSNSには一時、一日100件近い誹謗中傷がよせられていた。同番組は打ち切りが発表されたが、問題は残されたままだ。木村さんに限らず、SNSでは個人を標的にした誹謗中傷が多い。SNSのトラブル実態に詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんが、SNSでの誹謗中傷実態と対策について解説する。
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「ネットでそう書いてあったから信じただけ。自分が書き込んだことは誹謗中傷に当たるのか。訴えられないか」
40代パート主婦のAさんは、「○○(女性タレント)はビッチ。未成年の頃は窃盗やカツアゲの常習犯だった」という旨の投稿をしてしまったのが今になって心配だという。
もともとその女性タレントのことは何とも思っていなかったが、ネットでそのような噂を見つけて腹が立ち、つい書き込んでしまったそうだ。書き込みは既に削除したが、何かの拍子にタレントから訴えられるかもしれないと不安になるという。
「パートをしても生活が苦しいのに、悪いことをしている人がタレントをしていい生活をしているのが許せなかった。ネットでも複数の似た書き込みを見かけた。ただ、お金もないし訴えられると困る」
木村さんの悲劇は、SNSでの誹謗中傷が引き金のひとつとなって起きたと言われている。SNSなどのインターネットで誹謗中傷が多い理由は、匿名性の高さが原因だ。匿名性が高いと、人は攻撃性が高くなることが知られている。Aさんの例のように、うっぷんを晴らすために使われることも多い。中には、正義感を持って非難批判を書き込む人も少なくない。
有名人やタレントなどに対しては、「有名税」という考え方がある。著名人であることを理由に、恋愛関係や不祥事が報じられ、結果として肖像権などが制限されることを税金にたとえて使われるのが「有名税」だ。それを勝手に拡大解釈して、SNSで有名人を非難批判していいと思う人もいるようだ。しかし、噂でしか知らない話は当然事実とはかけ離れているものだし、相手の尊厳を傷つけてよいわけがない。何より、悪意に深く傷つき、木村さんの例のように悲劇につながることもある。