人間である限り、妬みや嫉みといった感情と無縁で生きるのは難しいが、それを人にぶつけないように工夫して生きられるのも人間だろう。ところが、SNSでは普通の人が驚くほど簡単に人を罵り、言葉の石を投げつける。仕事や人生がいまひとつうまくいかないと鬱屈する団塊ジュニアやポスト団塊ジュニアを「しくじり世代」と名付けた俳人で著作家の日野百草氏が、ネットでの誹謗中傷をやめたいのにやめられない40代女性についてリポートする。
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「私だって本当は嫌なんです。でもやめられないんです。あの人のことを考えるだけでもうスマホとにらめっこ、気づいたときにはリプ飛ばしてる、本当につらい」
電話口で話す声はとても可愛らしいのに、その内容は実にエグい。チューミンさん(仮名・ハンドルネームとも関係なし・40代)の電話口の告白は、SNS上でもう5年以上バラまいている誹謗中傷がやめられないという内容だ。つまりチューミンさんは日々、会ったこともない他人を傷つけ、追い込んでいる女性ということになる。
「朝起きたらすぐスマホです。気がついたときにはスマホを覗いている生活です。目的はすべて、フォローしてる女をチェックするためです」
フォローしている女性は有名人だがここでは名前も匂わせもしない約束なので触れないが、チューミンさんはその女性に対する攻撃で何度かアカウントを凍結されている。それでもめげずに誹謗中傷(チューミンさん的には「批判」であり「意見」)を続けてきた。ちなみにその女性のことを本稿では「あの女」とするが、チューミンさんの口から出るのは当然ながら実名である。
「帰宅中も、帰宅後もずっとスマホでチェックしてます。自分のことをつぶやいたりはあまりしません。するにしてもあの女のことです」
悪口を直接言わずに自分のツイートで相手を誹謗中傷するエアリプ、本来は「@ユーザー名」とあて先をつけてつぶやくところ、あえて誰に対する返信か分からないようにつぶやくということか。
「職場でも休憩に入ったら即スマホです。あの女はステマのためにしょっちゅうツイートしてるんで」
チューミンさんはコールセンターでアルバイトをしている。国公立大学を卒業後、いろいろあって今はアルバイトをしながら都下で一人暮らしをしているという。その「いろいろ」の部分は聞けなかったが、勉強のできる努力家なのだろう。
「本当にもう、書くこと話すこと全部許せないんです。写真のドヤ顔とか見ると吐き気がします。ブスのくせに」