夜になると赤くライトアップされ東京アラートを示し、緊張感を増す東京都庁舎から新宿駅を挟んで徒歩で約10分、約3000軒ものバーやキャバレーなどが並ぶ新宿区歌舞伎町は世界でも有数の夜の歓楽街だ。眠らない街と呼ばれた歌舞伎町が、新型コロナウイルスの流行によって静まりかえっていたように見えていたのだが、新規のコロナ感染者に歌舞伎町のナイトワーク従事者が複数、含まれていることが判明した。ライターの宮添優氏が、なぜホストクラブは水面下で営業を続けていたのか、ホストたちはなぜ働き続けているのかについてレポートする。
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緊急事態宣言が解かれたものの、福岡県北九州市や東京都で、減少傾向にあった新型コロナウイルス感染者の数が増え始めた。これを、必ず来ると言われてきた「第二波」と指摘する声もあるが、特に目立つのは「クラスター」といわれる集団感染だ。韓国でも同様に、第一波が落ち着いた直後に、ナイトクラブでクラスターが発生。クラブが原因の感染者が100名を超えているとみられているものの、ナイトクラブを訪れた人々が嘘の個人情報をクラブ側に伝えていたこともあり、感染者の追跡に難航した。
今、日本でも同様のことが発生しているのではないか。強い危機感を抱くのは、新宿歌舞伎町の飲食店経営・野田恵子さん(仮名・40代)だ。
「東京都での新規感染者の多くが、新宿の繁華街に関係しているとの報道がありましたよね。実は、5月のゴールデンウィーク明けから、歌舞伎町にあるほとんどのホストクラブは営業を再開したんです。ただ、表向きはやっていない、ということになっていました。ホストの子たちが、仕事前にうちの店にやってくるのですぐにわかったんです。ホストだとわかると、警察やマスコミに追われるから大変、などとも話していました」(野田さん)
自粛要請が出されてもなかなか応じずに営業を継続した事業者といえば、パッと思い浮かぶのはパチンコ店だ。筆者も関係者に取材をしたが、彼らが主張するのは、休業補償金をいくらかもらったところでどうにもならない、という商売スキームについてだった。つまり、都内であれば休業要請に応じれば100万円を超える金が給付されるが、パチンコ店は月に数千万円以上の経費を使って、人件費や機材のリース費用などを捻出できる額の収益を得るため、1日休めば数百万単位でのマイナスが出て、とにかく開けて金を稼ぎ続けるしか無いという現実である。「夜の街」にも同様のことが言える、と指摘するのは、都内のキャバクラ店経営者である。
「我々の商売も、月に数百万するようなハコ(場所)を借りてやるわけですから、休めばハコ代が、そして人件費も捻出できない。4月頃は同業者もこっそりやっていたんですが、銀座や六本木の店でクラスターが発生したということで、さすがに休業したんです。開けていても、お客さんは怖がってこないし、そもそも女の子のキャストも集まらない」(都内のキャバクラ店経営者)
その一方で、東京アラートが出された今でこそ小池百合子・東京都知事から名指しされているが、それまでほとんど語られてこなかったのが「ホストクラブ」だったという。