音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、増え始めた「有料ライヴ配信」落語会から、立川こしら独演会「こしらの集い」で披露された弟子・立川かしめの二ツ目昇報告と、そこで見せたかしめの前座噺の魅力についてお届けする。
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今、インターネットでの「有料ライヴ配信」落語会が増え始めている。無料配信や投げ銭方式ではなく、決まった代金を支払って視聴券を購入した者だけが観る形式だ。
4月2日の立川こしら独演会「こしらの集い」は、お江戸日本橋亭での定例会を急遽「関係者のみ立会いの無観客ライヴ」に変更、こしらの通販サイトでチケット代を支払った者に対してライヴ配信の視聴可能なURLを送る、という形で行なわれた。実は、こしらは既に2月から新型コロナウイルス感染拡大を懸念して、会場に来なくても観られるように各地の「こしらの集い」の有料ライヴ配信を始めていた。それを「無観客」に移行した形だ。
開口一番はこしらの弟子、立川かしめ。これはいつものことだが、この日こしらはかしめにもう1席、トリの高座も務めさせた。4月1日に二ツ目に昇進しながら、15日に国立演芸場でやるはずだった昇進披露落語会が中止になってしまった愛弟子への、師匠の粋な計らいだ。
かしめの1席目は『つる』。隠居に聞いた「鶴の由来」を友達に話そうとして失敗するのだが、相手は「裏のお鶴ちゃん」のことばかり気にしていて、さらにお鶴ちゃんが出てきて意外な一言を……という改作。急転直下のサゲで呆然とさせるあたりは師匠こしらに通じるが、ひねくれた展開を飄々と聞かせるトボケた芸風に独特の魅力がある。