「たどり着けた」と語る本木氏

土橋:私としてはむしろ、アフターコロナの世界を意識した新しいものを書いてみたい気持ちもあります。抗体を持っている人が上級市民になる、みたいな(笑い)。

本木:困ってしまうのは、映画やドラマの撮影現場ですよ。役者さんはともかく、撮影スタッフはとてもソーシャルディスタンスを保ってできる仕事じゃないですからね。ワクチンが開発されるまで、当分はこれまでのような撮影は難しいのかもしれない。

土橋:たしかにそうですね。それでも、どんな時代でもエンターテインメントは絶対に必要なものだと思います。不急かもしれないけど、決して不要ではありません。

本木:今は過去の名作をたくさん再放送していて、それはそれで面白いけど、そろそろ皆さんも新作が見たいと渇望し始めているでしょうね。だからこそ、晴れて撮影が再開できるようになった暁には、どんな作品を用意できるかが問われます。

土橋:なおさら、新作であるこの『大江戸グレートジャーニー』が、滑り込みセーフで撮了できたのは大きいですね。

本木:我々撮影スタッフも辰五郎たちと同様、「伊勢神宮までたどり着けてよかった!」という気分です。1人でも多くの方にお楽しみいただければ嬉しいですね。

【PROFILE】
土橋章宏(どばし・あきひろ)/作家・脚本家。1969年、大阪府生まれ。関西大学工学部卒。2011年「超高速!参勤交代」で第37回城戸賞受賞。2013年に小説『超高速!参勤交代』で作家デビュー。2014年公開の同名映画で第38回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。著書には映像化作品多数。

本木克英(もとき・かつひで)/映画監督。1963年、富山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。松竹に入社後、1998年に監督デビュー作『てなもんや商社』で第18回藤本賞新人賞受賞。2014年『超高速!参勤交代』、2018年『空飛ぶタイヤ』で日本アカデミー賞優秀監督賞受賞。2017年よりフリー。

●取材・構成/友清 哲

※週刊ポスト2020年6月12・19日号

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