夏の行楽シーズン目前。この時期、例年全国各地のイベントやお祭りに向けて大忙しになるご当地の“ゆるキャラ”たち。しかし今年は、新型コロナウイルスの影響で各地のイベントが相次いで中止となり、ゆるキャラの仕事が激減しているという。ゆるキャラの着ぐるみの“中の人”にその苦しい状況を聞いた。
ゆるキャラ研究家の犬山秋彦さん(44才)は、自ら“中の人”として、東京都品川区の戸越銀座商店街のマスコットキャラクター『戸越銀次郎』と、同じく品川区大崎西口商店街のマスコットキャラクター『大崎一番太郎』の2つのゆるキャラを運営している。
「例年なら、この時期は毎週末、地元商店街での定例イベントや地方のイベントに呼ばれて忙しい時期なのですが、今年は1月下旬以降、仕事はすべてキャンセルになりました。各地のゆるキャライベントもすべて中止となり、毎年5月下旬に開催される都内最大のご当地キャライベント『ご当地キャラクターフェスティバル in すみだ 2020』も取りやめになりました」(犬山さん・以下同)
ゆるキャラのイベントなどの出演料の相場は知名度などによってさまざまだが、犬山さんの場合、無料~5000円、高くても3万円ほどだという。
「私のように、自治体ではなく個人でキャラクターを運営している者は、出演料よりもイベントでのグッズ販売が主な収入源。大きなイベントなら数十万円ほどの売上げがあるのですが、イベントがなくなってそれが完全にゼロになってしまいました」
しかし、頭からすっぽりと被る着ぐるみは、フェイスシールドや防護服を装着しているようなものなので、問題ないのではないか。
「キャラクターがそこにいる、というだけで人が集まってきてしまうんです。子供たちが駆け寄って来て握手を求めたり、着ぐるみに顔をうずめたりするので、感染拡大防止の観点からするとあまり良くないですよね」
集客が目的であるゆるキャラの存在意義が否定される悲しい事態だ。特に戸越銀座商店街は、緊急事態宣言が出て初めての週末、商店街の混雑ぶりがテレビで報道され、「コロナなのになぜ店を開けているのか」など苦情が相次いだ。そのため商店街は、お店や人々に向けてかなり厳しく自粛を呼びかけた。
「今は、完全にボランティアで、コロナ感染予防のため商店街で配布する大崎一番太郎のポスターや戸越銀次郎のイラストを作成・提供したりしています。普段から商店街の皆さんにはお世話になっていますから、こういう非常時こそ役に立てたらと思います。人前には立てませんが、こういう形で人々のすさんだ気持ちが少しでも和らげば嬉しいです」