東京都知事選の告示(6月18日)を目前に控え、小池百合子・東京都知事(67才)の動向が新型コロナウイルス対策以外で注目されている。いわゆる“学歴詐称問題”だ。一冊のノンフィクション作品がきっかけで再燃した疑惑──。国際ジャーナリスト・山田敏弘氏が真相に迫る。
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その本の帯には《救世主か?“怪物”か?彼女の真実の姿。》と書かれてある。
5月末に発売された『女帝 小池百合子』(文藝春秋刊)。作家の石井妙子氏が、3年半にわたって小池百合子・東京都知事の半生を取材し、まとめたノンフィクションだ。
小池知事は1971年に19才で単身、エジプトの首都カイロにわたり、名門カイロ大学に入学。1976年に「首席」で卒業したという。その後はニュース番組のキャスターを経て政界入りし、2016年からは女性初の都知事となり、“次の総理候補”とまでいわれるようになった。
この本では、特に小池知事の学歴にスポットを当てている。“カイロ大学卒業が虚偽ではないか”と指摘しているのである。
もし虚偽ならば、公人である小池知事は公職選挙法違反(虚偽事項公表罪)に問われる可能性も出てくるから、ただの嘘では済まされない。
『女帝』が指摘する最大の根拠は、当時、カイロで小池知事と同居していたことがあるという女性の独白だ。
この同居女性の主張をまとめると、こうだ。小池知事は、高度なアラビア語が不可欠となるカイロ大学にエジプト人有力者のコネで入学。だがアラビア語がまったくできず、大学の授業でアラビア語の手助けをしてもらうために日本人留学生と結婚するも、すぐに離婚。結局、その後に一時帰国した日本で「カイロ大学卒業」という嘘の学歴をメディアに売り込んだと同居女性は小池知事本人から聞かされた──。
実は筆者も小池知事の学歴詐称疑惑を調べるために2017年にカイロで現地取材を行っている。
留学当時の小池知事を知る日本人やエジプト人は、彼女に卒業できるアラビア語能力はなかったと一様に口を揃えた。日本人として初めてカイロ大学を卒業した小笠原良治・大東文化大学元名誉教授をはじめ、カイロ時代の小池知事と交流があった人たちには「カイロ大学を卒業できる能力はなかった」とはっきりと述べる者も少なくない。
『女帝』によれば、カイロ時代の同居女性はこれまで40年以上も口を閉ざしてきた理由を、「小池さんと同居していたものとして知っている事実を口にするには、彼女はあまりにも有名で、国民に知らされている情報を覆すことは、私自身の身の安全を考慮してもできませんでした」と吐露。その上で、「カイロ大学は1976年の進級試験に合格できず、従って卒業はしていません」と語っている。
小池知事は帰国後すぐに、カイロでの学生生活を仔細にまとめた著作『振り袖、ピラミッドを登る』(講談社刊)を出版している。だがそこには事実関係の矛盾や嘘が入り交じっているという指摘はかねてからあった。