「もう、お母さんをやめたい……」「ずっと子どもが家にいるとちょっとしたことでイライラしてしまう」──学校や保育園・幼稚園は少しずつ再開されてきたものの、新型コロナウイルスによる“ステイ・ホーム”によって子どもと過ごす時間が増えた親たちの中には、ストレスが増えたというケースが少なくない。実際、ユニセフはコロナの影響による子どもたちへの「虐待」「暴力」リスクが高まっていると警告している。
女性のメンタルケアの専門医であり、親子のメンタルケアでも注目を浴びる精神科医の加茂登志子氏が語る。
「家族が集まって家で過ごす時間が急に増えました。親も子どももストレスがたまるのは当然です。特に、母親の負担感は激増しているでしょう。日本では、子どものことは母親に責任があるという考え方がまだ多くあり、その負担は想像以上です。まずはお母さんが1日の中で少しでもゆっくりできる自分を取り戻す時間が必要です。
しかし、幼い子がいれば、そうもいっていられません。私のところにも、育児に疲れ果て、どうしていいかわからないという方が何人も相談にいらっしゃいます。そんなお母さんには、『子育てのどんなところに困っていますか?』と具体的に改善したいところを探っていきます。そして、子どもへどのように声をかけたらよいか、どうふるまえばいいかなどのスキルを紹介します」(加茂氏。以下同)
加茂氏が紹介している“スキル”とは、「PCIT」(Parent Child Interaction Therapy=親子相互交流療法)というもの。加茂氏は『PCITから学ぶ子育て』という著書もあり、多くの親子に実践しているという。どういうものなのか。
「PCITは、科学論文で認められた心理療法を使った育児スキルです。12歳までのお子さん、特に2歳~7歳のお子さんに効果があるというエビデンスがあります。
まずは、3つのDon’tスキルと、5つのDoスキルをお伝えします。Don’tスキルは『命令しない』『質問しない』『批判しない』。そしてDoスキルは、『ほめる』『繰り返す』『まねをする』『行動の説明』『楽しむ』です」