コロナ自粛が明けても社員の在宅勤務を推奨して継続する企業は多いが、そこで大きな問題となっているのが、働いている姿が見えないことで起こるパワハラだ。「テレハラ(テレワークハラスメント)」なる新語まで生まれる中、組織論を専攻する同志社大学政策学部教授の太田肇氏が、テレハラ防止の処方箋を示す。
* * *
新型コロナウイルス対策としてテレワーク、リモートワークが普及するとともに、「テレハラ(テレワークハラスメント)」、「リモハラ(リモートハラスメント)」という新語が生まれた。
テレワーク中の社員からは、「いつも見張られている感じがする」とか、「以前より頻繁に報告を求められるようになった」、「常に回線を接続しておかなければならない」といった不満が聞かれる。
一方、管理職の側には、「部下が仕事をサボっていないか不安だ」と口にする人が多い。最近はテレワーク中のパソコンの内部を覗いて、どれだけ仕事をしているかをチェックするシステムも普及しているという。そこまでいくと、もはやストーカーのレベルだ。
こうした現象を目の前にして、「テレワークは性善説に立たなければ機能しない」と忠告する人もいるが、果たして性善説に立てば問題は解決されるだろうか?
思うに上記のような管理職の行動は、管理職自身に問題があるのではない。実際、だれかがサボれば、他の人にそのしわ寄せがいく。また性善説のもとで信頼を裏切る部下が現れたら、「正直者が馬鹿を見る」とばかりに、他の部下までサボり出すかもしれない。性善説は、それが裏切られたとき対処不能になる。だからこそ管理職は、部下が頑張っているかどうかをチェックしなければならないのだ。
要するに「テレハラ」の根本原因は管理職の意識や姿勢にあるのではなく、組織と仕事の仕組みにあるといえる。そもそも従来の組織と仕事の仕組みは、テレワークに適していないのである。