新型コロナウイルスの感染拡大によって、注目度が高まるのが「肺炎」だ。実は一口に肺炎といってもさまざまな種類があり、起こる場所によって「肺胞性肺炎」「間質性肺炎」の2つに大別される。
単に「肺炎」という場合、前者の「肺胞性肺炎」を指すことが多い。ウイルスや、マイコプラズマなどの細菌、食べ物や飲み物が気管に入る誤嚥などによって、肺胞の内側が炎症を起こす。特に高齢者がかかりやすいのは「肺炎球菌」という細菌が原因のものだが、ワクチンで予防が可能だ。また、細菌による肺胞性肺炎は、抗生物質によって治る場合もある。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんが説明する。
「ただし、近年は『耐性菌』の問題が指摘されています。たとえばウイルス性の風邪は抗生物質では治せない。それなのに『念のため』といって処方する医師がいまだにいる。やたらと抗生物質をのむことで、薬が効かない菌が増えつつあります。そうなると治療の幅が狭まってしまうのです」
つまり“念のため”が後々命取りになるかもしれないのだ。いざというときに困らないよう、ふだんから抗生物質の濫用には気を払いたい。
一方、「間質性肺炎」は、肺胞の周囲にある組織である「間質」が炎症を起こす病態だ。新型コロナウイルスで起きる肺炎はこのタイプであることが多いほか、膠原病などの自己免疫疾患、アレルギー、金属やアスベスト(石綿)などの粉塵を吸い込んだことによるものなどが知られている。それ以外にも原因不明の「特発性間質性肺炎」も多発している。
肺の炎症は肺胞の壁を厚く硬くし、酸素を取り込みにくくする。一度硬くなってしまった部分は、残念ながら元通りになることはない。
また、肺胞性よりも間質性肺炎の方が重症化しやすく、苦痛が大きいという特徴があるという。
「間質性肺炎は、本来はウイルスや細菌などの異物だけを攻撃するはずの免疫システムが過剰に活動して、その周囲の正常な細胞も攻撃して傷つけてしまうことが大きな原因です。
肺の一部に炎症が起こる肺胞性肺炎と違い、早期の段階から肺全体にくまなくダメージが与えられることに特徴がある。当然、治療も難しくなります」(上さん)