緊急事態宣言に伴う在宅ワークの広がりによって、政府に言われるまでもなく「働き方の新しいスタイル」の良さに気づいた人が多いようだ。サービス残業や休日出勤が当たり前で忙しい日々は充実しているのだと思っていた学校の先生たちも、以前の働き方でよいのだろうかと疑問を持ち始めた。生徒や保護者の前では言えない胸の内を、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための緊急事態宣言が解かれ、小中学校や高校も、分散登校や時短授業などを取り入れながら再開した。ランドセルを背負った無邪気な子供たちを見て「日常が戻りつつある」と晴れやかな気持ちになった人も少なくないはずだが、一方で不安を口にする人もいる。それは他でもない、学校の先生たちだ。
「丸2ヶ月の間、仕事はほとんどできませんでした。普段が多忙だったからかもしれませんが、喪失感も抱いたし、ホッとできた部分もあるし、複雑な気分です」
千葉県内の公立小学校に勤務する教師・永坂優馬さん(20代・仮名)は、本年度から新4年生のクラスの担任である。緊急事態宣言期間中もほぼ毎日学校へ行き、生徒宅や生徒の親に電話をして、子供たちの生活の様子や学習状況を聞き取った。緊急事態宣言が出された直後は、早ければ5月には学校が再開されるかもしれないと、大急ぎで授業のスケジュールを組んだりもしたが、結局1ヶ月伸びることになり、仕事はほぼ無くなった。
「スポーツクラブの顧問もやっていましたので、授業が終わると夜7時まではそちらの指導もやっていました。帰宅は毎日午後9時ごろです。朝は7時半には学校に着き授業の準備。土日は試合などで潰れるし、入学式や運動会前はその準備もしなければなりません。お休みの期間はそうした仕事がほぼゼロになりました。朝9時から夕方まで職員室で過ごして、全く残業なしに帰る生活です」(永坂さん)
実を言うと、と前置きをして永坂さんが打ち明けたのは、休校中のライフスタイルの方が「人間的な生き方ができていた」ということだ。
「妻と小さな子供がいますが、コロナ以前はほとんど構ってやれませんでした。教員になることは夢でしたし、教職に就いている以上、それが当たり前だと思っていました。しかし、仕事があっての家族ではなく、家族があっての仕事ではないのか、そう強く思うようになったんです」(永坂さん)