浅田真央や錦織圭などトップアスリートに愛用され、一気に寝具メーカーとして知名度を高めたエアウィーヴ。創業者の高岡本州会長兼社長(59)は、父親の配電機器メーカーを継いだ後、畑違いの寝具業界へ打って出た異色の経歴の持ち主だ。
──このシリーズではまず、平成元年(1989年)当時を伺っています。
高岡:父が創業した日本高圧電気に入社したのが1985年のことでした。電柱に使われる配電機器のメーカーで、配電線トラブルがあった時に電流を遮断する「高圧カットアウト」で圧倒的なシェアを持つ会社です。
私は名古屋大学卒業後、慶応大学大学院で経営学を勉強して日本高圧電気に入社しました。留学を勧められ、米スタンフォード大の大学院でシステム工学を学び1987年に帰国しました。
帰国後、私はセラミック関連の新規事業を任されたんですが、ビジネススクールで学んだ視点で見ると、とても採算が取れると思えなかった。それで父といつも大ゲンカしていましたね。平成の初めはそんな毎日でした。
──1998年に日本高圧電気を継がれたが、家業の社長ポストを兼務しながら、寝具メーカーを興したのはなぜですか?
高岡:父の会社を手伝いながら、伯父の会社もサポートするようになりました。エアウィーヴの前身の中部化学機械製作所です。
この会社は椅子などに使うクッション材も作っていたのですが、その弾力性や復元性が素晴らしかった。これを活用すれば素晴らしい寝具ができると考えたのです。
寝具業界は、いくつかの有名ブランドが寡占している保守的な業界です。ポケットコイルというスプリング構造1つとっても100年前に開発された技術で、長い年月イノベーションが起きていなかった。新規参入が難しい業界ですが、「やり方次第で勝てる」と考えた。