新型コロナウイルスの影響で、医療や介護の現場は今もギリギリの状態が続いている。現場が崩壊しないために対策すべきことは何か、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が解説する。
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ぼくの母校、東京医科歯科大学では、総力を挙げて新型コロナウイルスと闘っている。数億円をかけてICUを全面的に改装し、コロナ患者専用にした。手術も絞った。20あった手術室のうち17を閉鎖し、残りの3つで緊急手術などを行なっている。そして、病院前にテントを設置し、入院する患者さんたちのPCR検査を行なっている。水際作戦である。
病棟も再編した。ICUを含めた4つの病棟で、陽性者を診療できるようにした。さらに1病棟は、疑いのある患者さんを個室で管理できるようにした。陽性の人と陰性の人が混在している可能性があるため、いちばん神経を使う。
産婦人科も、この難しい課題に挑んでいる。妊婦がはっきりと陽性であれば、感染症指定病院の産科があるところで出産をする方法がある。しかし、家族などに感染者が出て、妊婦が検査結果待ちのときに陣痛がきたという場合にどうするか。何度もシミュレーションを行ない、陽性かもしれない妊婦さんのお産を支えようとしている。こうした対策は、一か月約12億円の収入減になるという。
医療崩壊だけでなく、介護崩壊も防がなければならない。欧米のデータでは、死亡者の半数近くは介護施設に入所している人たちといわれている。日本でもその兆しはある。共同通信の調査では、5月8日の時点で、介護施設で入所者474人と職員226人合計700人が感染している。そのうち79人が亡くなった。
富山市の富山リハビリテーションホームでは、50人以上が感染した。当時、富山市民病院で30人を超える院内感染が発生し、200人のスタッフが自宅待機になっていた。市内にある県立中央病院でも院内感染が起きていた。施設の陽性者を、病院が受け入れられない状況に陥ったのである。