警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回も前回に引き続き、ヤクザ業界の絶品レシピを披露。
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「俺の作ったメシが美味いからって、若いのが調味料を買ってきて自宅で料理し始めたよ」
元組長はそう言いながら、嬉しそうに若い組員からLINEで送られてきた写真を見せてくれた。ラー油やごま油、創味シャンタン、七味唐辛子など中華料理に欠かせない調味料が写っているが、いったい彼は何を作ったのか?
「超簡単な当番レシピ、油うどんだ」
「油うどん」と聞いて、まず頭に浮かんだのは「油そば」。スープのないラーメンだ。こってりしたその味がやみつきになるらしく、都内某所の油そば専門店では緊急事態宣言前、昼時になるといつも店の前に長蛇の列ができていた。ネットに出ているレシピでは、茹でた中華麺にごま油や醤油、オイスターソースに麺つゆ、ラー油などを絡ませ、具には卵やチャーシュー、ネギなどを用意するとある。
だが元組長が使う調味料はたった3つ。
「サラダ油に醤油、創味シャンタン。なければ、味覇(ウェイパー)。この万能調味料さえあれば、どんな料理も『何、これ!?』というぐらい本格的な味になる」
用意する材料はうどん1玉、サラダ油大さじ1/2、創味シャンタン小さじ1、醤油少々。うどんを茹で、その間に用意した調味料を器に入れて軽くかき混ぜる。固形状の創味シャンタンは、きっちり溶かす必要なし。
「茹であがったうどんをよく湯切りして、用意しておいた器に入れ、調味料をざっと絡ませると、うどんの熱で創味シャンタンが溶け、いい具合にうどんに絡みつく。後はお好みで七味唐辛子かゆずこしょうを混ぜるだけ。これがめっちゃ美味いんだ」
「だまされたと思ってやってみな。この前、食べさせたやつは『これ、ヤバイですね』って。食べ終わったと思ったら『おかわりいいですか?』って、もう1玉、自分で茹でて美味そうに食べてたよ」
組事務所では手軽で手早く作れ、腹持ちのいいメニューは重宝される。元組長のレシピでは、入れる油はごま油ではなくサラダ油。その方が味がくどくならず、スルッと食べやすいので好評だったのだという。
「これなら、うどんさえあればすぐ食える。材料費も3玉78円とかのうどんを買えば、一人前30円くらいのものさ」
材料は近くのスーパーに買い出しに行く。美味くて安いのはいいが、彼が当番だった時、当時の組長もこれを食べたのだろうか?
「それはない。そりゃ、たまに組長が事務所に来て『いい匂いやな、今日はカレーか?』ってこともあれば、一緒に鍋を囲む時もあったけどね」
組事務所の当番で作る食事は、事務所に出入りする組員たちや当番者のためのもの。基本的に組長のために作るものではない。そのため組長の口に合わなくても怒られることはなく、時にこんな簡単レシピが登場することもあるという。
六代目山口組ともなれば神戸の本部に食堂があり、総本部の車両の誘導、出し入れの確認や警備、警戒を行う「ガレージ当番」として傘下組織から持ち回りで常駐する組員たちだけでなく、「プラチナ」と呼ばれる直参の幹部連やその付き人たちも利用するらしい。