新型コロナウイルスは当初、気温が上昇する夏には感染が沈静化するとされた。しかしその後、夏真っ盛りだった南半球のオーストラリアなどでも被害が拡大し、楽観説が一掃された。最新の研究でも「夏に再流行する説」が続々と発表されている。
米ワシントン大学の保健指標評価研究所(IHME)が6月11日に公表した予測では、アメリカでは新型コロナ感染の第2波が8月第4週から始まり、10月1日までの死者数は累計で16万9890人に達するとされた。
「IHMEは、経済活動規制の緩和や、夏のバカンス期に見込まれる人の移動などから、8月中に新型コロナの第2波が到来すると予測しました。同時期に科学誌『サイエンス』に掲載された論文でも、米プリンストン大学の研究チームが『新型肺炎に対する人間の現在の免疫性の欠如は、今年の夏もしくは秋に急速な感染拡大の誘因となり得る』として、この夏の第2波到来に警告を発しました」(医療ジャーナリスト)
すでに、世界各国では異変が続いている。
中国・北京では約2か月にわたり新規感染者はいなかったが、6月14日までの4日間で食品卸売市場を中心に計79人の感染者が確認された。韓国では6月に入ると、首都圏を中心に連日30人以上の感染者が確認されている。
これまでロックダウン(都市封鎖)を行わない独自路線で感染者を抑えていたスウェーデンでは、感染者数がここ最近になって大幅に増加。6月11日には感染確認者数が過去最大の1474人となった。
各国の状況を見ると、静かにだが、第2波が足音を立てて近づいてきている。「新しい生活様式」が始まった日本も例外ではない。
第1波は落ち着いたとみられたが、最近は都内を中心に感染者がじわじわと増加。6月14日には47人、15日は48人の新規感染者が東京で確認された。5月25日に緊急事態宣言が解除されて以降の最多人数を2日連続で更新した。
経済同友会の櫻田謙悟代表幹事が6月1日、加藤勝信厚労相らとのテレビ会議で「第2波はウイルスの変異により、感染力が拡大する可能性がある」と発言した通り、第2波の脅威として「ウイルスの変異」が指摘される。
東京農工大学農学部附属国際家畜感染症防疫研究センター教授の水谷哲也さんが指摘する。
「ウイルスは人に感染し細胞を乗っ取ると、自らをコピーして増殖していきます。その際、コピーミスが生じ、毒性が強まることがあります。しかも、新型コロナの遺伝物質は『RNA』という物質で、一般に知られる『DNA』よりも変異が起こりやすい。ただ、コロナウイルスは修復能力を持っているので、RNAウイルスのなかでも変異は起こりにくい部類に入ります」