コロナ禍で困窮する中小企業や個人事業主を救済するための税金で、大企業が“濡れ手で粟”で潤っていた──その構図は国民の怒りと不信を買った。一般的には民間の企業広告を仲介する「大手広告代理店」と評される電通だが、今回の問題で明るみに出たのは「国策」に深く、広く食い込む“公共事業仲介者”としての側面だ。
電通を巡る“中抜き疑惑”が続々と明るみに出ている。発端は国の持続化給付金事業だった。経産省から同事業を769億円で受託した「一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ推協)」は、20億円を差し引いた749億円で電通に再委託した。
そこから電通は、子会社や人材派遣大手・パソナなどに計645億円で外注。その過程で104億円が“中抜き”された計算になる。
サ推協は電通やパソナが設立に関与した法人だが、決算公告がスカスカで活動実態がほとんど見えない“幽霊法人”だった。他にも同様のスキームで複数の官公庁から業務を請け負っていたことがわかっている。
電通などが設立した「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」は経産省のキャッシュレスポイント還元事業を339億円で受託し、307億円で電通に再委託。2011年に電通が設立に関与した「一般社団法人環境共創イニシアチブ」も総務省から受託したマイナポイント還元事業実務の多くを電通に再委託していた。
『電通巨大利権』などの著書がある博報堂出身のノンフィクション作家・本間龍氏が指摘する。
「これこそ電通のビジネスモデルの典型です。クライアントの依頼を、自ら手を動かすのではなく、然るべき企業に外注することで利益を得る。広告宣伝からコールセンター開設といった実務の手配まで1社で手がけてくれる電通に任せるのは役人にとって実に合理的なのです。持続化給付金の件で会見した榑谷典洋副社長は『電通は広告会社ではなくソリューション会社』と語りましたが、つまり問題解決のための“仲介手数料”が電通の収入となっているわけです」