緊急事態宣言が解除され、日常が少しずつ戻りつつある。テレビ界でも、番組の撮影がスタートされ始めた。そんななか、放送されているバラエティ番組にある傾向が見られるという。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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このところ飲食チェーンをフィーチャーしたバラエティが明らかに増えています。
たとえば、8日の『帰れマンデー見っけ隊!! 3時間SP 帰れま10』(テレビ朝日系)ではガスト、12日の『ウワサのお客さま』(フジテレビ系)ではピザーラと丸亀製麵、13日の『ジョブチューン』(TBS系)ではスシローのメニューが大量に紹介されました。
また、14日の『坂上&指原のつぶれない店』(TBS系)では、かつや、富士そば、築地銀だこの経営者が「つぶれそうな店を立て直す」という企画で飲食チェーンの凄さを感じさせましたし、情報番組でも飲食チェーンの商品を扱うコーナーが頻繁に見られます。
飲食チェーンをフィーチャーしたバラエティで、よく見られるのは、大食いの構成・演出。『帰れま10』ではガストの宅配メニュー45品の中から売上上位10品を当てるまで食べ続け、『ウワサのお客さま』ではピザーラのピザ全42種類をランキング順に食べていきました。『有吉ゼミ』(日本テレビ系)でも毎週のように大食い企画「チャレンジグルメ」が放送されていますし、今年4月に新番組『デカ盛りハンター』(テレビ東京系)がスタートするなど、飲食チェーンと同様に大食い企画も増えているのです。
なぜ今、バラエティで飲食チェーンと大食い企画が増えているのでしょうか。コロナ禍の影響はあるのでしょうか。
◆コロナ禍で「最も手の届きそうな外食」に
バラエティで飲食チェーンを扱う最大のメリットは、視聴者に親しみやすさを感じさせられること。安くて、近くに店があって、お腹いっぱい食べられる飲食チェーンは、人々の嗜好が細分化した今、老若男女が同じように楽しめる数少ないものです。前述した番組のほとんどが、より多くの人々が視聴しやすい金・土・日曜の夜に放送されていることからも、それがわかるのではないでしょうか。だからこそバラエティでは、「食べたことがある」「今度食べたいと思っていた」「懐かしい!まだこれあるの?」などと思わせるメニューを次々に登場させ、親しみやすさを加速させているのです。
そんな飲食チェーンにも、新型コロナウイルスはさまざまな影響を与えていました。緊急事態宣言による外出自粛が続き、家で食事をとる毎日になったことで、「最も身近で手の届きそうな外食」である飲食チェーンに注目が集まったのです。逆に高級店は、まだまだ我慢を強いられ、先行きが不透明な現在の状況には合わないため、ほとんど放送されることはありません。
さらに飲食チェーンはデリバリー対応しているところが多く、コロナ禍で売り上げがアップしたところも多いようです。実際、前述した『帰れま10』はガストの宅配メニューをピックアップした視聴者感情に寄り添うような企画でした。
また、大食いの映像には、「料理も、食べっぷりも、映像の圧倒的なインパクトで視聴者の目を引きつけられる」というメリットがあります。『有吉ゼミ』の「チャレンジグルメ」がギャル曽根さんらの奮闘もあって高視聴率を連発し、YouTubeでも大食い動画が人気コンテンツになり、新たな大食いスター候補が次々に誕生。飲食チェーンがフィーチャーされていること以外にも、大食い企画が増えているハッキリとした理由があるのです。
◆飲食チェーンは“3密”になりにくい