ビジネス

新聞販売店の苦境 折り込み広告モデルの未来はあるのか

苦境に立たされている新聞販売店(時事通信フォト)

苦境に立たされている新聞販売店(時事通信フォト)

 一般紙とスポーツ紙をあわせた日本の新聞の総発行部数は2019年時点で3781万部。2000年の5370万部と比べると、凄まじい勢いで減少していることが分かる(日本新聞協会調べ)。同様に、新聞社の商売に欠かせない新聞販売所の従業員数も2001年には46万4千人だったのが、2019年には27万人となっており、部数以上の割合で激減している。従来のビジネスモデルが崩壊しつつある新聞業界で、販売店はどこも青息吐息だ。急速に変わる経済環境のなかで、かつては安泰だと思われていた新聞販売業の苦境について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
新田貴之さん(仮名・60代)は、関東地方にある父の代から続く新聞販売店店主。大手紙、スポーツ紙、地元紙を扱い、多い時では朝刊だけで数千部の配達実績を誇った。しかし、新聞の発行部数が落ち込むとの同時に、この十年ほどで経営は大幅に悪化。以前は数店あった販売店も縮小せざるを得なくなったと訴える。

「販売店はさ、広告料で儲かるわけ。地元のスーパーのチラシとか求人チラシとかさ。得意先に、うちの新聞は何部だから、広告もそれだけ配りますよって説明して、それでお金をもらう。部数が減ったら、それだけ儲けもなくなる」

 かつて日本の新聞は、世界的に見ても驚異の発行部数を誇っていた。いや、今でもそうで、大手紙はいまだに朝刊500万部以上を公称している。例えば、世界的に有名なウォール・ストリート・ジャーナル紙印刷版が約100万部、ニューヨーク・タイムズ紙平日版はその半分程度の発行部数だ。もっとも、世界中の新聞社が、すでにネットを使った発信にシフトし始めているため「紙」以外の影響力も無視できないレベルだが、それでも日本の「新聞紙」は桁違いということがわかる。しかし、その巨大な産業も約20年の間に業界全体で1500万部も減ってしまうと、収益構造が狂ってくる。

「新聞が売れなくなってくると、本部からはもっと仕入れろ、減らすなとハッパをかけられる。それでも減らすと、自分の配達エリアを他の販売店に回す、なんて脅しをかけられたりね。新聞をみんなが読まなくなってきていることは知られてしまっているから当然、広告主からも、本当にそんな部数配ってるの? 広告費おかしくない、となってきて」(新田さん)

 配達される新聞購読者は気が付いているかもしれないが、新聞発行部数の減りと比較し、折り込みチラシの減り方はもっと極端だ。近所のスーパーや求人チラシは、今や風前の灯火という有様、主な理由としては、そうしたチラシを必要としている世代がネットに流れ、チラシが不要になっていることが挙げられるだろう。現在、配達される新聞折り込み広告で目立つのは、健康食品やサプリメント、そして霊園や葬儀場、介護施設や介護付きマンションなどの広告ばかり。どういった世代が多く新聞を読んでいるのか、このことからだけでも想像がつく。

関連キーワード

関連記事

トピックス

百合子さまは残された3人の仲を最後まで気にかけられたという(2023年6月、東京・港区)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン