ネコの伝染性腹膜炎の治療に用いられる薬品が、人間の新型コロナウイルスの感染者の治療にも効果がある可能性があることが分かってきた。米国の製薬会社は5月中旬、米国食品医薬品局(FDA)に対して、ネコ用薬品を人間の臨床実験に用いる許可を求めていた。そして、中国の研究者が6月初旬、実験室でその薬品を新型コロナウイルスに使った結果、ウイルスの増殖が停止したという。研究者は実験結果を論文にまとめて発表しており、人間用の新薬開発に期待が高まっている。
香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』によると、このネコ用の薬品は「GC376」で、米カリフォルニア州ロングビーチに拠点を置くバイオテクノロジー企業であるアニビブ・ライフ・サイエンス社が開発。人間に感染しない種類のコロナウイルスによって引き起こされる、ネコ伝染性腹膜炎に苦しむ猫の治療に使用されている。
同社では新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大するなか、ネコも新型コロナウイルスに感染していることに着目。ニューヨークのブロンクス動物園で、咳を含む症状を発症し、ウイルスの陽性反応を示した5匹のトラと3頭のライオンにGC376を投与したところ、症状が改善。その後、陰性になったことから、人間にも効果があるのではないかと考えたという。
同社は過去数か月間の独自の研究に基づいて、FDAに対して、GC376の成分を人間に適用するための新薬開発の臨床試験開始の緊急承認を求めたという。