緊急事態宣言を受けて、急遽テレワークに対応した会社は多かった。それに対応するため、ウェブカメラやヘッドセットなどが品薄になったほどだった。テレワークとは時間や場所にとらわれない働き方のことで、何年も前から推奨されてきたがなかなか導入がすすんでいなかったのが、新型コロナウイルス対応のため、結果として取組が進んだ。IT利用におけるトラブル実態に詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんが、テレワークによってもたらされたワークとライフの質の変化と、残されている問題について解説する。
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「久しぶりに会社に行ったら、通勤だけでどっと疲れた。自分のストレスの大半は通勤だったことがよくわかった」
「子どもがやっと保育園に行ってくれた。一日子どもの世話に忙殺されて仕事にならなかったから、会社に行けるのが嬉しい」
緊急事態宣言が解除されてすぐに通勤となった人からは、そんな声が聞かれた。では、テレワークの実態はどうだったのか。
テレワークを歓迎していた人の意見で多かったのが、「通勤がなくなってストレスが減った」というものだ。ある40代男性は、「通勤がなくなり、浮いた時間で散歩したり、家族と食事したりできた。趣味の時間もできて充実していた」と振り返る。往復3時間分もの通勤時間がなくなり、仕事にあてられて快適だったという。
「子どもといる時間が増えてゆっくり過ごせた」という声もあった。小学生の子どもを持つある40代女性は、「普段は忙しくてあまりゆっくり話す時間がなかったけれど、一緒に料理をしたり、学校の宿題を見たりできた。仕事をしている姿を見せられたのもよかった」という。
一方、「通勤がないのに逆に長時間労働になってしまった」という話もある。ZoomやTeamsなどを使ったテレビ電話会議は移動時間がなくて便利だが、連続して入れられてしまうことも多かったと聞く。「今日はもう5連続会議」とため息を付いていた人を見たこともある。自宅なので切れ目なく仕事をしてしまい、結果的にいつもより長い時間仕事をしているという人もいた。
子どもが低年齢の場合は、保育園が休園となり、仕事どころではなかった家庭が多かったようだ。夫婦で交互に子どもを見たり、ついついYouTubeを見せっぱなしになったという話も聞いた。そのようなケースでは、多くが仕事の効率が落ちていたそうだ。
「運動しなさすぎて、5キロも太ってしまった。通勤しないとまったく動かなくなってしまう。通勤は大事だと思った」と、ある40代女性はいう。「パン作りにハマった上、テイクアウトやお取り寄せもしてしまった」。
このように、在宅を続けたことによる「コロナ太り」となってしまった人もとても多かった。ある調査では4割程度の人が体重が増加したと回答しており、慌ててダイエットを始めた人も多かったようだ。