新型コロナウイルスによる企業への打撃が深刻だ。東京商工リサーチによると、6月19日時点での企業の経営破綻は全国で271件。コロナの影響が本格化する3月頃から急増し、特に宿泊業や飲食業、アパレルなど、これまでインバウンドや個人消費で潤っていた企業を中心に「コロナ破綻」が相次いでいる。
人事ジャーナリストの溝上憲文さんが語る。
「アベノミクスの恩恵を受けて、多少なりとも景気が良かった業界はこれまで人を増やしてきましたが、コロナの影響で経営状態が悪化している企業が多い。今後も景気の悪化が続くのは確実ですから、企業は”大義名分”のもと、相当思い切った人員削減に踏み切らざるを得なくなるでしょう」(溝上さん・以下同)
既に、パートやアルバイトなどの非正規雇用の労働者の数は、前年と比べて97万人減少。休業者の数は過去最多の600万人に迫る勢いで、この休業者の多くがそのまま失業するリスクもささやかれている。
「影響は非正規だけではありません。これまで雇用が守られてきた大企業の正規労働者も矢面に立たされることは確実です。真っ先に対象となるのが、『社内失業』状態にあるいわゆる”窓際族”と呼ばれる人たちです」
エン・ジャパンがこの5月に発表した最新の調査によると、社員1000人以上の大企業で、社内失業者が「いる」「いる可能性がある」と答えた企業は47%。2019年2月の前回調査から6ポイントもアップし、社内失業者は「50代」にいるという回答が最も多かった。「終身雇用制度の崩壊」が叫ばれて久しい昨今、大企業のほぼ半数で“使えない”50代社員が残っていることに驚きだ。
「大企業の中には、依然終身雇用制の会社が多いということでしょうね。本人の能力不足や、新しい仕事への積極性がないとか、協調性がなくチームワークができないといったさまざまな理由で生まれる『社内失業者』は、日本型雇用に守られてきた中堅・管理職層に多い傾向があります」
日本の人事制度では、そうした人材を指名解雇できないため、企業は希望退職者を募って新陳代謝を図る。だが、その裏では対象者に退職勧奨、いわゆるリストラが行われているのが実情だ。このコロナ禍では、どんな社員がリストラ対象になるのか。
「リーマン・ショックの時も、企業は大々的に希望退職者を募りましたが、対象とした45才以上ではカバーできず、30才以上にまで対象を拡大しました。今回のコロナ不況は、リーマン・ショック時よりも業績が悪化している異常事態ですから、30才以上の希望退職者を募る企業が出てくることは想定しておくべきでしょう。大手企業の多くが国から受け取っている雇用調整助成金の支給期限は、3か月程度(100日)ですから、4~6月の決算が終わる7月以降に動きが本格化すると見ています」
溝上さんがリーマン・ショック時に出版社と共同で行った社員の意識調査では、30才以上がリストラ対象になることについて、20代の社員の7割が賛成していたという。
「当時20代だった社員が10年経った今、今度は自分がリストラ対象になる可能性もあります。『リストラなんて中高年の話』と安心していると、足をすくわれかねません」