子どもを取り巻く環境は様変わりしている。テクノロジーの進化は著しく、親世代の経験則がそのまま通用するとも限らない難しさもある。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察する。
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短絡的で浅はかな若者だ、としか言いようがないのだけれども、6月24日、宮城県仙台市の男子大学生(21)が、香川県のインターネット・ゲーム依存症対策条例(以下、ゲーム条例)の成立に主導的だった県議を脅迫した疑いで逮捕された。
大学生は、4月22日、自民党の自称「真正保守」の大山一郎県議宛てに、「大山一郎ナイフでめった刺しにして殺す」とのメールを送信したという。逮捕した香川県警高松北署によると、「香川県のゲーム条例を廃止したいと思った」と話しているとか。だからといって、そんなメールを出したら犯罪になることぐらい、21歳にもなればわかって当然だが、頭のネジの飛んだ大学生が1人いたということだろう。苦笑するしかない事件である。
幸いなことに、このニュースに対し、世間の反応はわりと冷静だ。「こういう自分の感情をコントロールできない若者をつくってしまうから、ゲームは怖い」といった、事件とゲーム依存を直接結びつける声はごくわずかしか見当たらない。それよりも、「脅迫という犯罪行為に走るのは、ゲーム規制推進派を利することになってしまう」という「心配」の声のほうが多かった。
香川県のゲーム条例は今年の3月に県議会で成立したものだが、そこに至るまでのプロセスにおいて、県民や事業者から意見を募ったパブリックコメントを隠蔽、改竄したなど、問題点が指摘されてきた。また、内容についてもエビデンスに乏しいなど、いろいろと批判されてきた。
ゲーム条例の目的は、〈ネット・ゲーム依存症対策を総合的かつ計画的に推進〉するというものなのだが、中身を具体的に見ていくと、たしかにこれはどうかなと首を傾げたくなるものも少なくない。
その中でも「子どものスマートフォン使用等の制限」として定めた、以下の条項はいかがなものかと思う。
〈保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用にあたっては、1日当たりの利用時間が60分まで(学校の休業日にあっては、90分まで)の時間を上限とすること及びスマートフォン等の使用に当っては、義務教育修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子供については午後10時までに使用をやめることを基準とするとともに、前項のルールを順守させるよう努めなければならない〉
「前項のルール」というのは、スマホ等使用に関して家庭内でつくるルールのことを指すのだが、だったら平日の上限が60分で、休日は90分とか、細かなルールを条例でわざわざ明記する理由がわからない。なぜ家庭内の話に行政が口出しをするのか。60分、90分という基準が、ゲーム依存症にならないための重要な線引きであるといった科学的根拠に乏しいという批判もある。
また、1日60分だけ集中して遊んで、時間が来たらピシッとやめて、勉強なり他の課外活動なりに切り替えるといった「健やかな」な若者像を押しつけている感じがする。私はこの点がとても気になる。