政府が明らかにしている、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例にはまず、感染防止の3つの基本として、1)身体的距離の確保、2)マスクの着用、3)手洗いがあげられている。これを、プライベートでも仕事でも基本とするのが新しい生活様式だ。そのため、これまでは当たり前に行われていたサービスも形を変えざるを得なくなっている。ライターの森鷹久氏が、主に接客の場面で発生している新しい生活様式にまつわるトラブルについてレポートする。
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新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした「自粛要請」が解除されたが、ウイルスが完全に封じ込められた、ということでは決してない。今後は、ウイルスが身近にあることを前提とした「新しい生活様式」に沿って日常を過ごしていかなければならない。
ただ、こうした新たな取り組みは、一部の人にとっては受け入れ難く、場合によってはトラブルにも発展してしまう。
「お釣りをお返しするとき、感染防止策として受け皿にお渡しするようにしているのですが、一部のお客様は、手を差し出し、なぜこちらに渡さないんだと不快感を示されます。男女を問わず、中高年のお客様にこの傾向があり、その都度ご説明をしないといけない」
こう証言するのは、都内の百貨店勤務・近藤友香里さん(仮名・30代)。客層は富裕層がメインで、客と従業員のトラブルは起こりにくかったというが、コロナ禍以降、こうしたトラブルが増えたと話す。
「従業員はマスクの上にシールドをつけてお客様に対応をしているのですが、どうしても声がこもってしまう。声が聞こえにくい、と怒鳴ったり、シールドを小突いて来られる方もいらっしゃいます。これが、新しい生活様式なのだと説明差し上げても、なかなか理解はしていただけない」(近藤さん)
千葉県在住の大手配送業者勤務・山中拓郎さん(仮名・20代)も、新たな生活様式を知らない客とトラブルになったという経験を明かす。
「お届け先の方が事前にネットで『置き配』の希望を出されていたので、門を入った玄関扉の脇にお荷物のダンボールを置きました。すると、宅配先のご家族から、営業所にクレームの電話がかかってきたんです」(山中さん)
置き配とは、玄関前や宅配ボックス、車庫などあらかじめ指定された場所に非対面で荷物を届けることだ。再配達を減らすために宅配ボックスの導入がすすんでいたが、感染予防対策の観点から、配達物の受け渡しもできる限り対面が避けられるよう、以前よりも積極的に活用が進められている。ただ、やはりこうした取り組みをよく理解していない人からすると、置き配自体が「怠慢」に見えるのかもしれない。