日本は世界一の不眠大国。「最近忙しくて常に眠い」「たっぷり眠ったはずなのに、なぜか疲れが残っている」…その眠気、いつまでも抱えていると、次は二度と目覚められなくなるかもしれない。睡魔がもたらすリスクを知れば、忙しいあなたもいますぐ寝床に入りたくなるはず。
◆寝ても寝ても眠いのは病気の兆候
うつ病になると不眠症状を訴える人が多いが、雨晴クリニック副院長で睡眠専門医の坪田聡さんは「季節性うつ」では眠くなると指摘する。主に秋に発症し、春になると治る季節性の「冬季うつ病」は、過眠傾向になるのが特徴だ。
「発祥のメカニズムはまだ解明されていませんが、ヨーロッパでは北欧、日本では北日本での発症が多い。日照時間が短い地域のため、冬眠と同じように眠くなるのではないかと考えられています」(坪田さん・以下同)
幻覚や妄想などの症状が出る「統合失調症」や、子供に多い「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」でも、眠気が出ることがある。
「これらの精神的な病気を抱えている場合、脳内物質の分泌がうまくいかなくなります。すると、日中、意識を覚醒させるのに必要なセロトニン、オキシトシン、ドーパミンなどの脳内物質が不足し、常に眠気を感じるようになる」
良質な睡眠が取れないと、病気自体も悪くなりやすいため、悪循環に陥りやすい。高齢者の場合、外傷を放置することで眠気が起こることがある。
「転んで頭を打つなどした1~2か月後に、慢性的な眠気を感じるようになったら要注意です。『慢性硬膜下血腫』といって、転んでから時間をかけて頭の中でじわじわと出血が進み、脳を包んでいる『硬膜』という部分に血がたまっている状態になっている可能性がある。
“いつも寝てばかりいる”という高齢者にCT検査をしたら、脳に血がたまっていたことがありました。たんこぶができるくらい頭を打ったら、3か月くらいは注意して様子を見た方がいい。放っておくと意識障害に陥るケースもあります」
満腹になると誰でも眠くなるものだが、毎食後に耐えられないほどの急激な眠気を感じるのであれば、糖尿病の疑いがある。
「糖尿病を抱えていると、食後に血糖値が急上昇して、インスリンが大量に分泌され、その後血糖値が急降下する。その後低血糖に近い状態になって、意識がぼんやりして眠くなります」
坪田さんは、もし“危険な眠気”を感じたら、まずは医師の診察を受けた方がいいとアドバイスする。