今年前半の生活を激変させたコロナ禍で、心身ともに元気が出ないまま熱中症の季節がやって来る。ただでさえ体内に保持する水分量が少ない高齢者は、意識的な水分補給が必要だが、閉じこもり生活の陰で進む“低栄養”の影響も心配だ。
在宅訪問などで高齢者の生活をよく知る管理栄養士のヨネヤマクミコさんに、コロナの夏に負けない食事のコツを聞いた。
◆意外なところで落とし穴!手軽な菓子で低栄養に
「以前はがんばって近くのスーパーに行って、栄養も考えて買い物をしていた人たちが、そこが閉店してしまっただけで買い物難民になる。行き慣れない店の売り場で、同じ食材でもパッケージが違うだけで迷ったり、買えなくなったりするのが高齢者なのです」
在宅療養者を支援するヨネヤマさんが語る高齢者のリアルな生活。コロナ禍が目に見えないところにも影を落としていることがよくわかる。
「そして結局、菓子パンだけ、そうめんだけなど、手軽なもので食事を済ませてしまうことになりがちです。手軽なものは糖質が多く血糖値の上昇も気になりますし、ほかの栄養素が充分摂れないので低栄養になります」
低栄養というと食事をせずに“飢餓”のイメージがあるが、満腹でも栄養バランスが崩れていることがあるのだ。
体のエネルギー源になる糖質、筋肉などを作るたんぱく質、エネルギー源やホルモンの材料、細胞膜などを作る脂質、ほかの栄養素の機能を調整するビタミンやミネラル、腸内環境をよくする食物繊維などが、バランスよくすべて揃うことで初めて体はスムーズに動く。低栄養に偏れば、当然、支障が出るという。
「筋肉量が減ってしまい、少し動くと疲れて気力もなくなります。さらに食欲が減り、水分摂取量が減り、お通じも悪くなるという悪循環。ちなみに筋肉は体の水分を蓄えている場所なので、筋肉量が減ると体内の水分量も減ってしまいます。高齢者はどうしても食べられる量が減りますから、先にお菓子でお腹をいっぱいにしないで、まず食事を大切にしてほしいのです」
また、高齢者が1日に摂るべき水分量は約2リットル。3食しっかり食べれば約1リットル分は摂れる。そのほかにコップ1杯の水分を、起床時や睡眠前、運動や入浴の前後など5回くらいを目安に摂ろう(持病などのため水分制限がある場合は医師の指示に従うこと)。