新型コロナウイルスの感染拡大の影響でストップしていた連続ドラマがついに再開。吉川晃司初主演ドラマとして『由利麟太郎』が注目を集めている。このドラマは横溝正史の代表作のひとつ。これまで多くの横溝ドラマを見てきたコラムニストのペリー荻野さんが、その見どころについて解説する。
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吉川晃司が元警視庁捜査一課の凄腕捜査官の犯罪心理学者を演じる『探偵・由利麟太郎』。『犬神家の一族』などで知られる金田一耕助シリーズの横溝正史原作作品だけに、初回から殺人予告、血が滴る冷凍庫の中の美女、謎のドクロ、秘密部屋の人体実験とおどろおどろしさ満点。設定が現代なのに、人体実験の記録がすべてノートに手書きというところも、いい感じだ。二話ではチェーンソー、三話ではピエロと昭和っぽい凶悪度、奇怪度も増してきた。
長年、私は横溝作品に熱中し、石坂浩二版金田一映画の市川崑監督はじめ、テレビシリーズで主演した古谷一行、スタッフ、キャストに取材をしてきた。そこで気がついたのは、横溝映像作品の「もうひとつの楽しみ方」。それは、名探偵の「相棒」の面白さを見つけることだ。
由利麟太郎には、ミステリー作家志望の助手・三津木俊助(志尊淳)がいて、無口な由利に代わって、「あ、そこから逃げたのか」「このベランダから外に」などと叫び、物語を引っ張る。が、ドラマにはもうひとり「相棒」がいる。京都府警の等々力警部(田辺誠一)である。等々力は、由利の大学時代の同期で、丸眼鏡にぼさぼさ頭。トレンチコートはよれよれで、角に触ったら手が切れそうな由利のブラックロングコートとは対照的だ。
横溝作品ファンなら、「等々力警部」と聞いただけで、名優・加藤武の顔が思い浮かぶはず。石坂金田一の第一弾『犬神家』(1976年)で地元警察署長役だった加藤は、1977年の『女王蜂』1978年の『獄門島』、1979年『病院坂の首縊りの家』では等々力警部として、2006年の『犬神家』リメイク版にも署長として登場している。まだ、事件の輪郭もはっきりしていないうちに「よし、わかった!!」と手をたたき、間違った犯人を断定したり、慌てて粉薬を噴き出すシーンはすっかりおなじみとなった。