ライフ

自粛期間のお葬式 参列断られた80代女性、自力で葬儀場探す

オバ記者と93才の母。自粛要請が解除されて、老親の元に走った人がどれだけいたか…。「そうか。帰ってきたか。じゃがいも掘ってやっから持っていけ」と言う母は、この4か月でひとまわり小さくなっていた

 空中ブランコや富士登山など、体験取材を得意とする『女性セブン』の“オバ記者”ことライター・野原広子(63才)が、世の中のトピックをゆるく語る。今回のテーマは「ようやくの自粛要請解除。わが悲喜こもごも」。

 * * *
 6月半ば以降、人と会えば「出た?」と、聞かずにいられない。特別定額給付金の申請をして4週間。心細い残高に10万円がプラスされていないか、毎日、ネットバンキングをチェックしているわよ。

 私の住む東京都千代田区では、申請書が来たのは5月末と早かったけれど、投函して4週間たつのに、ウンともスンとも。こうなると本当に給付されるのか、何か書類に不備があったのか、日々、不安でたまらない。

 6月19日に移動の制限が解除されてから、真っ先に向かった故郷・茨城は、かなり早く受給されたようで、申請して1週間後には振り込まれたそう。

「でも、全額素通りよ。5人家族分の50万円は砂に水をまくよう。財布を握っている夫に『出た?』と聞いたら、『適切に処理しました』と言われてオシマイ」

 彼女の家だけじゃない。聞けば、人もお金も動かなかったこの3か月間、自営業者のお財布事情はどこも一緒。私も含め、心細すぎて笑うしかないんだって。

 そこへいくと、コロナ禍の被害が最も小さい公務員は言うことが違うよ。「経済を回すために1人10万円出るんだから、全額、使わないと」と、まあ、鼻息の荒いこと。たしかに特別定額給付金はありがたいけど、いつ給付されるかに始まって、何に使うか、使えるかで、天と地ほどの違い。人の不平等さを浮き彫りにしたお金でもあるのよね。

 不平等といえば、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県と北海道の住民もそう。全国で緊急事態宣言を解除した5月25日以降も、県をまたいでの行き来は自粛を要請されちゃった。ってことは実質、行き来禁止。

「そんな法律は日本にない」といくら言ってもムダだって。何かあったら責任取れるのかと、誰が言わなくても、自分が自分に言うもの。私だってこの4か月、何があっても茨城の実家に帰らなかった。

 実家には、93才の母親が足を引きずりながら畑を耕し、ひとり暮らしをしている。その母親が5月末に立てなくなったの。すわ、施設行き? その手続きは誰がする。「いま、仕事、休めねぇんだよなぁ」と、弟の心細い声を聞いたら急に“自粛要請”の重みが両肩にのしかかってきた。

 幸い、母親は治療してすぐに元通りに戻ったけれど、リモート会話で「オレの葬式には来れるのか?」と言われたときは何て答えたか、覚えていない。

 その直後のこと。茨城に住む従兄(私と同い年の63才)が亡くなった。葬儀に出席するかどうか。喪主である奥さんと話したら「家族だけで見送るからいいよ」とのこと。そりゃそうよ。葬儀となると葬儀場の職員がいる。お坊さんも来るだろう。保菌者でない保証のない私が東京から参列したらどうなる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

タイと国境を接し、特殊詐欺の拠点があるとされるカンボジア北西部ポイペト。カンボジア、ミャンマー、タイ国境地帯に特殊詐欺の拠点が複数、あるとみられている(時事通信フォト)
《カンボジアで拘束》特殊詐欺Gの首謀者「関東連合元メンバー」が実質オーナーを務めていた日本食レストランの実態「詐欺Gのスタッフ向けの弁当販売で経営…」の証言
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
まさか自分が特殊詐欺電話に騙されることになるとは(イメージ)
《劇場型の特殊詐欺で深刻な風評被害》実在の団体名を騙り「逮捕を50万円で救済」する手口 団体は「勝手に詐欺に名前を使われて」解散に追い込まれる
NEWSポストセブン
戸郷翔征の不調の原因は?(時事通信フォト)
巨人・戸郷翔征がまさかの二軍落ち、大乱調の原因はどこにあるのか?「大瀬良式カットボール習得」「投球テンポの変化」の影響を指摘する声も
週刊ポスト
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン