空中ブランコや富士登山など、体験取材を得意とする『女性セブン』の“オバ記者”ことライター・野原広子(63才)が、世の中のトピックをゆるく語る。今回のテーマは「ようやくの自粛要請解除。わが悲喜こもごも」。
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6月半ば以降、人と会えば「出た?」と、聞かずにいられない。特別定額給付金の申請をして4週間。心細い残高に10万円がプラスされていないか、毎日、ネットバンキングをチェックしているわよ。
私の住む東京都千代田区では、申請書が来たのは5月末と早かったけれど、投函して4週間たつのに、ウンともスンとも。こうなると本当に給付されるのか、何か書類に不備があったのか、日々、不安でたまらない。
6月19日に移動の制限が解除されてから、真っ先に向かった故郷・茨城は、かなり早く受給されたようで、申請して1週間後には振り込まれたそう。
「でも、全額素通りよ。5人家族分の50万円は砂に水をまくよう。財布を握っている夫に『出た?』と聞いたら、『適切に処理しました』と言われてオシマイ」
彼女の家だけじゃない。聞けば、人もお金も動かなかったこの3か月間、自営業者のお財布事情はどこも一緒。私も含め、心細すぎて笑うしかないんだって。
そこへいくと、コロナ禍の被害が最も小さい公務員は言うことが違うよ。「経済を回すために1人10万円出るんだから、全額、使わないと」と、まあ、鼻息の荒いこと。たしかに特別定額給付金はありがたいけど、いつ給付されるかに始まって、何に使うか、使えるかで、天と地ほどの違い。人の不平等さを浮き彫りにしたお金でもあるのよね。
不平等といえば、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県と北海道の住民もそう。全国で緊急事態宣言を解除した5月25日以降も、県をまたいでの行き来は自粛を要請されちゃった。ってことは実質、行き来禁止。
「そんな法律は日本にない」といくら言ってもムダだって。何かあったら責任取れるのかと、誰が言わなくても、自分が自分に言うもの。私だってこの4か月、何があっても茨城の実家に帰らなかった。
実家には、93才の母親が足を引きずりながら畑を耕し、ひとり暮らしをしている。その母親が5月末に立てなくなったの。すわ、施設行き? その手続きは誰がする。「いま、仕事、休めねぇんだよなぁ」と、弟の心細い声を聞いたら急に“自粛要請”の重みが両肩にのしかかってきた。
幸い、母親は治療してすぐに元通りに戻ったけれど、リモート会話で「オレの葬式には来れるのか?」と言われたときは何て答えたか、覚えていない。
その直後のこと。茨城に住む従兄(私と同い年の63才)が亡くなった。葬儀に出席するかどうか。喪主である奥さんと話したら「家族だけで見送るからいいよ」とのこと。そりゃそうよ。葬儀となると葬儀場の職員がいる。お坊さんも来るだろう。保菌者でない保証のない私が東京から参列したらどうなる。