人間ドックなどの際に、胃がんの検査として「胃カメラか、バリウムか」という2択を示されることが少なくない。「胃カメラは“オエッ”となる感覚が苦しい」「バリウムは飲んだ後にゲップを我慢するのがつらい」といった具合にどちらも敬遠されがちな検査だが、新たな選択肢となりつつある「ABC検診」について解説する。
現在、国が推奨する胃がん検診はバリウム検査と上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の2つだが、“第3の選択肢”として注目されているのが胃がんリスク検診だ。血液検査で「ピロリ菌感染の有無」と「胃粘膜の萎縮の程度」を調べ、胃がんリスクをA、B、C、Dに4分類することから「ABC検診」とも呼ばれる。『週刊ポストGOLD 正しい健康診断』の中で、マールクリニック横須賀院長の水野靖大医師はこう語っている。
「胃がんの原因の99%を占めるといわれるピロリ菌の感染がなく、胃粘膜の萎縮もない人が『A群』で最もリスクが低いと評価されます。このグループは、胃がんになる可能性はかなり低い」
以下、低リスク順に、
●B群=ピロリ菌感染あり、胃粘膜の萎縮は軽度
●C群=ピロリ菌感染あり、胃粘膜の萎縮が進行
●D群=現在はピロリ菌に感染なしだが、かつて感染していたなどで胃粘膜の萎縮が重度と分類される。
「ABC検診を実施している神奈川県横須賀市のデータでは、A群以外の人への胃カメラ検査では、B群からは0.63%、C群は1.74%、D群は1.79%の割合でがんが見つかりました。
胃がんが見つからない場合も、B、C群の人はピロリ菌を除去し、今後の胃がんリスクを下げる、D群の人は年に1回は胃カメラを受けるといった、その人のリスクに応じた対策が可能になるのです」(水野医師)
胃カメラなど体に負担がある検査へ進む人をスクリーニングできるのが特徴だ。実施主体にとっては費用を抑えられるメリットがあり、患者にとっても望ましい面がある。