世界で過熱するSUVブーム。長期休暇を取る機運が希薄な日本でも実用性、新奇性、ファッション性などいろいろな側面が消費者に受け、SUVの購入比率は高まりつつある。近年はコンパクトクラスのSUVが人気だが、「大型SUVでしか味わえない魅力もある」と指摘するのは、自動車ジャーナリストの井元康一郎氏だ。
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道路も駐車場も狭い日本で使いやすいSUVといえば、圧倒的にコンパクトクラス以下だが、SUV本来の“らしさ”を満喫できるのは、圧倒的にラージクラス、あるいはさらに上のプレステージクラスのモデルだ。
重量級ボディと長大なサスペンションストローク(上下動の幅)が生む優雅な乗り心地、乗員の視点の高さが生む眺望、広大無比なラゲッジルーム、高価格帯モデルならではの充実した電子装備……。
そんな大型SUV群の一角、ボルボ「XC90」で1泊2日、東京から宮城北部の気仙沼まで、総走行距離およそ1200kmのドライブをやってみた。
試乗車は「B5 Momentum(モメンタム)」という新設グレード。Bは小型電気モーターでエンジンパワーをアシストしたり、減速時に発電を行ったりすることで燃費を向上させるマイルドハイブリッドに付けられる記号、5は動力性能のレベルを表す記号だ。本拠地ヨーロッパでは同じB5にガソリンエンジンとディーゼルエンジンがあるが、日本に来るのは最高出力184kW(250ps)のガソリン版のみ。
モメンタムはグレード名。上位の「Inscription(インスクリプション)」に比べると装備が簡素なシリーズ最安の低価格版である。といっても希望小売価格は消費税込み824万円。試乗車には標準の本革シートよりタッチの柔らかなナッパレザーシート、グラストップ、エアサスペンションなどがオプション装備され、合計は900万円強であった。